地上デジタル放送をデジタルサイネージが受け取り、コンテンツとして配信するサービスの開発が進んでいる。放送波を受信できる場所に端末を置くだけでよく、配線・運営コストを減らせる。顧客の集客に頭を悩ませる地方の店舗を活性化させる旗振り役になる可能性も秘めている。
スーパーマーケット、公共施設、アトラクションなどでデジタルサイネージ(電子看板)の利用が広がりつつある。その場所にいる人が欲しいと想定される情報をリアルタイムに配信することで、購買など顧客の行動につなげることができるからだ。
デジタルサイネージの多くは、ネットワーク経由で動画や音声を配信し、ディスプレイに表示する。通常は、ネットワークを引ける場所にしか端末を設置できず、設置した場合は回線の敷設コストがかさむ。そのため導入に対して後手にまわる企業も少なくない。
こうした課題を解決するサービスの開発を進めているのが、デジタルサイネージ事業を手掛けるストリートメディアだ。インデックスホールディングスで取締役を務めた大森洋三氏が旗振り役となり、今年4月に設立された。
同社は、地上デジタル放送(地デジ)の放送波を受信し、それを店舗や街頭で流すデジタルサイネージの実証実験を11月末に開始する。舞台となるのは、東京都千代田区神田地域の商店街。2009年3月末までに最大100台を設置する予定だ。
「地デジの放送波を受信できる場所に置いた端末が、自律的にコンテンツを保存する仕組みだ。専用のネットワークは不要で、運営のコストを抑えられる」。同社の八田斉明取締役は新サービスに自信をのぞかせる。
放送と通信の融合の事例、そしてデジタルサイネージ普及の火付け役として、注目を集めそうだ。
実証実験では、非接触ICカード技術「FeliCa」を搭載した15〜24インチの端末「Touch!ビジョン」と、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)で放映する番組のコンテンツを使う。
ストリートメディアが、TOKYO MXの放送枠を購入し、独自に制作した商店街などを紹介する番組を放映する。Touch!ビジョンは、放送波中の放送言語を通信言語に変換する独自のブラウザを搭載しており、Touch!ビジョンを設置した商店街や店舗、商品に関連するコンテンツを再生する。
放送波が受信できる場所に端末をおくと、Touch!ビジョンに映し出すコンテンツを自律的に蓄積し、指定した時間に応じてコンテンツを配信できる。コンテンツに連動したクーポンやホームページのURLなどのFeliCa情報は、再生されるコンテンツと連動して変わる仕組みだ。
端末で取り扱うコンテンツは、主に神田の商店街の店舗や飲食店のメニューを紹介するものになるという。「おみくじやクーポンなどとも連動させたり、ニュースや天気予報なども流す」(八田氏)など、ユーザーの目視を誘い、店に足を運んでもらうような仕掛けも検討している。
年内に30台、2009年3月までに最大100台のTouch!ビジョンを設置し、店舗への誘導や視認効果などの検証を進めていく。
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