日米メディアや航空会社が追求するWebの品質(1/2 ページ)

オープンなインターネットの世界では多少のサービス品質は犠牲にされがちだった。しかし、Web型サービスの普及に伴ってビジネスの機会拡大に向けた品質向上への取り組みが本格化している。

» 2008年10月23日 10時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 在京民放の日本テレビ放送網は、インターネットで提供する動画配信サービス「第2日本テレビ」を10月20日にリニューアルした。番組配信インフラを変更し、新たな動画フォーマットを採用して、サービス品質や広告表現の向上などを図っている。

 今回のリニューアルに併せて、同社では第2日本テレビのサービスモデルを会員制(一部有料)から会員登録の必要がない完全無料制へと切り替えた。理由について、「多くの視聴者に見てもらうためには窓口を広げる必要があった」(総合広報部)という。

リニューアルした第2日本テレビの番組視聴ページ

 2005年のサービス開始当初は、広告収入を柱とする無料の地上波放送とは異なるモデルをインターネットで導入することにより、同社の収益機会の拡大を図る狙いがあった。しかしインターネット動画配信サービスの普及を受けて、地上波放送と同様にインターネットサービスでも広告収入が中心としたモデルの有効性が高まった。

 こうした広告型メディアへのリニューアルに伴い、技術面ではコンテンツ配信インフラをデータセンターから集中配信する仕組みから、アカマイの分散型コンテンツ配信インフラ「Dynamic Site Delivery」に切り替えた。また、コンテンツの表現力向上やデジタル著作権管理(DRM)技術への対応を強化するため、動画フォーマットにAdobeの「Flash Media Server 3」を採用した。

 アカマイの小俣修一社長によると、従来のような配信方式では、視聴者からの再生リクエストが増加するとネットワークのトラフィックやセンターサーバの負荷が高まり、「番組がスムーズに再生されない」「再生までに時間がかかる」といったサービス品質上の問題が懸念された。

 日本テレビが採用したDynamic Site Deliveryでは、アカマイがインターネット上に分散配置するメディアサーバ上に番組コンテンツをキャッシュする仕組みで、視聴者への番組配信を日本テレビのサーバからではなく、最寄りのアカマイサーバから提供する。配信サーバが分散化されていることで、トラフィックの集中による再生番組の遅延や中断といったトラブルの発生を回避できるようにした。

アカマイの配信インフラでは、番組データがメインサーバにアップされると自動的に各地のメディアサーバにもデータがキャッシュされる

 動画フォーマットは、従来はDRM技術に対応するのがMicrosoftのWindows Mediaに限られていたため、日本テレビではWindows環境での視聴を前提としていた。Flash Media Server 3の採用は、通信経路におけるデータ暗号化が可能な点や、正規ユーザー(Flash Player)からの再生リクエストを独自に認証してリッピングツールなどによる不正なファイル入手行為を遮断できる点などが決め手となった。

 また、Flashは画像と動画を1つの形式に織り交ぜながら多様なコンテンツ表現ができるため、視聴者への広告訴求では映像だけに頼らない形態を実現できるという。Flash形式に対応する機器がPCや携帯電話、家庭ゲーム機などと多く、将来的にDRM技術やデータ保護に対応した番組の視聴環境が広がる可能性もあった。

 日本テレビでは、「Windows環境に加えてMac環境の視聴者にも機会が広がったほか、動画とバナーなどを組み合わせた訴求力の高いクロスメディア型の広告表現を視聴者に提供できるようになった」という。

 小俣氏は、「CBSやNBCなど米国の放送局が提供する動画配信サービスでも広告モデルを採用しており、多数の視聴者に対して番組コンテンツを安定して提供することを重視しているようだ」と話している。

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