生活に身近な店舗の裏側に潜む脅威の1つに、振り込み処理による個人情報の入手があります。実際に被害者も出ているようです。かつては、さまざまな種類の振り込み用紙に住所や氏名、そして携帯電話の番号までも無防備に記載されていたのです。さすがに、現在ではこうした懸念に配慮して氏名しか記載されないものも増えてきました。
振り込み用紙の個人情報が悪用されると、その人の周辺を探るようになったり、ストーカーになったりといった怖いことが起きないとも限りません。身近な店舗は、生活に密着しているだけに危険度が高いといえるでしょう。金融機関のように対応者の素性が分かる場所では、振り込み用紙の個人情報を悪用することのリスクが大きいのです。
わたしは、身近な店舗で働く方を差別しているわけではありません。しかし、店舗や金融機関が取り扱う振込用紙は貴重な個人情報なのです。生活に身近な店舗では、振り込みだけでなく宅急便の送付やカメラのDPE、クリスマスケーキの予約など、実にさまざまな個人情報が取り扱われます。住所や氏名、そして電話番号……個人情報の宝庫ですね。しかも、ほとんどの場合は個人情報が示す本人が来るので顔も分かります。都市部なら利用者の大半が徒歩5分ほどの地域にいるので、身近な店舗で取り扱う個人情報は悪用者から見れば「おいしい情報」になるのでしょう。
あるフランチャイズでは、店舗へ情報管理を指導してもあまり浸透せず、店舗によってはまったく気にしないところもあるといった悩みを抱えていると聞きました。売り上げを追求するあまり、「ほかの面はある程度目をつぶってもいいか……」といった考えをしているごく一部の店では、日常的に情報が漏えいしているかもしれません。ある店員は、「カモがネギをしょってやって来る」とつぶやいたそうです。若い女性などは、事件に巻き込まれる危険も高まります。
こうした危険から身を守るためには、生活の様子を知られないようにすることが大切です。まずは、「獣道」を作らないことです。
例えば、「朝はいつも7時○○分発の電車の3両目の一番後ろ側に乗り、○○駅で下車して、いつもと同じルートで会社へ」といった具合です。帰りも、「月曜日は○○百貨店、水曜日は○○映画館に、金曜日は○○ジムに寄って、帰宅時間もほとんど同じで店を使う」という人も多いでしょう。できれば、自宅近辺なら複数の店を利用し、たまには勤め先の近くの店も利用する。駅前の店を利用する場合は、決まった乗車位置にしないといった防衛策が求められます。
また、深夜や自宅近くの店の利用する場合は本当に安心できるか、以下の点を心がけてはいかがでしょうか。
利便性ばかりに目が行ってしまい、個人情報の保護が疎かになってしまっては本末転倒でしょう。ぜひ、「自分の身は自身で守る」という情報セキュリティの大原則を忘れないでください。
※編集担当からのお知らせ:「ハギーが解説 目からウロコの情報セキュリティ事情」は、2009年1月13日から「会社に潜む情報セキュリティの落とし穴」をテーマに、毎週火曜日に掲載します。どうぞお楽しみに!
株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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