コラム
» 2008年12月16日 12時44分 公開

闘うマネジャー:面倒なことから逃れたいという「裏の目標」をふさぐ (2/2)

[島村秀世,ITmedia]
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プロに任せる安心感の代わりに失うもの

 自治体の中には、「システムをサービスとして買う」という考えを持つところもあり、7年に及ぶ一括長期アウトソーシングを実施していたりするが、筆者はこの考えを職員に持って欲しくない。なぜなら、一括アウトソーシングは、大手ITベンダーと長期契約を結ぶ代わりに割引率を上げてもらう手法であるだけでなく、「責任を取りたくない」、「面倒な仕事はしたくない」と思う職員の気持ちを極めて都合良くカバーしてしまう手法でもあるからだ。経費削減という「表の目標」と、面倒なことから逃れたいという「裏の目標」を同時に満足させてくれるのが、一括長期アウトソーシングだと筆者にはどうしても映る。

 確かに、プロに任せるという安心感は買える。耐障害性も向上するだろう。しかし、7年という期間は、自治体の中から自分たちのシステムを良く知る者を失わせていく。良く知る者が消えた時、ベンダーによる囲い込みは完了するが、それで本当にいいのだろうか。地域のためになるのだろうか。

 筆者は、可能な限り、自治体のシステム開発は地場の企業に行ってもらいたいと考えている。地域で生産された農産物を地域で消費する地産地消があるのなら、ITの地産地消があったっていいはずだ。

 地域に住むSEが、地域のためのシステム開発をする。これは、自然なことであるし、地域に根付く技術の育成にもつながり、地域の力を確実に向上させる。地域を自分自身の力で効率化し、守って行くのだから、「誇り」ともなる。もちろん、十分な体力があるとはいえない地場企業と仕事をしていくためには、発注者である自治体がいく分かの責任を負わなければならないし、面倒なことも少しは実施しなければならないが、自治体職員であるなら決して嫌なことではないはずだ。

 しかし、自治体職員も人の子である。専門でないばかりか、苦手とするシステムの話だ。避けて通りたいと考えても仕方がない。だからといって、避ける行動を取られてしまったら、ITの地産地消は望めない。なので、逃げ道を少しずつ、じわりじわりとふさいでいくことにした。先に書いたことは、いずれも逃げ道をふさぐための具体的手段に過ぎない。

 自治体CIOの役割は情報戦略の立案と実践だと人はいうが、筆者はそうは思わない。職員の考えを、地域にとって最も良いと思える方向へと少しずつ変えること。これが、自治体CIOの役割だと筆者は考える。ただし、最も良いと思える方向が正しい選択であったかどうかは、残念だが、後年の検証を待つしかない。

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プロフィール

しまむら・ひでよ 1963年3月生まれ。長崎県総務部理事(情報政策担当)。大手建設会社、民間シンクタンクSE職を経て2001年より現職。県CIOとして「県庁IT調達コストの低減」「地元SI企業の活性化」「県職員のITスキル向上」を知事から命じられ、日々奮闘中。オープンソースを活用した電子決裁システムなどを開発。これを無償公開し、他県からの引き合いも増えている。「やって見せて、納得させる」をマネジメントの基本と考える。


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