ブログという名の“わらしべ”ブログの過去、現在、未来〜日本ブログ界の5年間と今後を占う(3)(2/2 ページ)

» 2008年12月24日 12時24分 公開
[吉川日出行(みずほ情報総研),ITmedia]
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生かし方の進化

 企業のブログに対する態度はどうなるだろうか。

 連載2回目で述べたように、企業のブログに対する態度はいまだ及び腰だ。しかしここに来て、急激に企業の姿勢が変化しつつあるように筆者は感じる。日本企業は、従来のような性善説的なムードだけでは社員の行動を統制できなくなっている。会社の悪口や不平不満だけでなく、内部情報までもが匿名掲示板に垂れ流しとなってしまう可能性もある。

 こうした情報をコントロールしきれないのならば、あらかじめポリシーを策定してルールに沿って情報発信をさせた方がよい、という逆転の発想をもつ企業が出始めている。社員が実名で社名を明記して書いているブログを把握しておけば、トレースも可能であり、いざというときに素早く対処が行えるのだ。

 学生時代からブログを書き、保有したまま就職してくる新入社員も今後は増えるだろうし、ブログをすべて禁止するのは難しくなるだろう。ブログを使ってよりオープンな情報公開を行う姿勢をアピールした方が得策と考える企業もある。

 マーケティングツールとしてのブログも、従来の個別商品やサービスを売り込むためのものから、商品やサービスの背景にいる社員を売り込む方向へ変化する可能性がある。そうなると、社員を有名ブロガーに育ててブランドイメージ向上へとつなげる、という手法も増えそうだ。

 企業の姿勢の変化に対して、個人の反応はどうだろうか。

 アルファブロガー座談会のはてなブックマークに、「彼らは元々とんがっていた」や「スーツ(笑)には関係がない(自分は会社員だから、彼らのようにはなり得ないの意味か?)」というコメントがあった。しかし、果たして本当にそうだろうか?

 筆者もブログを始めて人生が変わったと思う1人なのであえて書くが、日本にブログサービスが誕生した5年前、彼らは一般人だったはずだ。もともと各個人に何らかの素養や才能があったのも確かだが、だとしてもそれは誰もが持っているような取り柄の1つと同じレベルのようなものだったかもしれない。それがブログを書き続けることで才能が認識されるようになり、アルファブロガーと呼ばれるようになった。

 会社員(スーツ)なので関係がないという人もいるが、前述したように企業とブログとの関係すらすでに変化し始めている。その影響が企業の中にいるスーツにはおよばない、と誰が言い切れよう。スーツにはスーツのブログ活用法があるはずだし、ブログで蓄積した知識を出版してその成果を会社に認めさせたマーケッターや、ブログで名を挙げ転職市場での評価をアップしたマネージャー、ブログで披露した専門知識に関連する講演やコンサルティング案件が舞い込み、いまではその分野の専門家として会社に収益をもたらすコンサルタントになったエンジニアなども実際にいるのだ。

 ブログは、使い方によっては人生を変えることができるほどの強力なツール(メディア)であり、それが手近にあるのだ。それを生かさない手はないだろう。そこにある“わらしべ”をつかんでみるか、そのまま見過ごすかは個人の自由であるが、もし勇気をもって踏み出せるなら、5年後はあなたに変化が訪れるかもしれない。

著者プロフィール:吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

主な著書「サーチ アーキテクチャ(ソフトバンククリエイティブ)」

ITmedia オルタナティブ・ブログ『ナレッジ!?情報共有・・・永遠の課題への挑戦』執筆中


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