9月に金融危機がウォール街を直撃する数週間前の8月の猛暑の最中、わたしは2009年を迎えるまでにGoogleに実現してほしいことをリストアップしていた……。
本記事を書いているクリスマスイブの早朝、Googleはわたしの期待に応えてくれなかったことに改めて気付いた。わたしが2008年中にGoogleに実現してもらいたかったのは次のことだ。
Android搭載スマートフォンの登場
Google自慢のモバイルOSがスマートフォンでデビューするのをわたしは願っていた(というよりは要求した)。この願いは9月23日にニューヨークで叶えられた。T-Mobile、Google、そしてメーカーのHTCが「G1」を発表したのだ。この携帯電話は10月に179ドルで発売された。2008年も終わろうとしている今、G1の後継機種の「G2」や、Motorola、Samsung、Sprintから登場予定のAndroid携帯電話に関する話題が盛り上がっている。2009年にはAndroid搭載ノートPCを期待するのは欲張りすぎだろうか。
OpenSocialがGoogle Appsで採用されること
OpenSocialは現在、「Orkut」サイトで運用されており、また、開発者はOpenSocialアプリケーションをiGoogleの開発者用サンドボックス内でテストすることもできるが、OpenSocialはGoogle Appsに組み込まれていない。しかしOpen Socialは最近、Twitterと連携したり、容易に実装できたりすることが実証されるなど、普及拡大の兆しを見せている。2009年にはOpen Social、Facebook Connect、MySpaceIDが提携先を競う中、OpenSocialがさらに勢いづくものと期待される。
GoogleとViacomがYouTube訴訟で和解すること
ViacomはGoogleのYouTube部門が、ユーザーによってアップロードされたComedy Centralの著作権付きコンテンツをはじめとするViacomのコンテンツを掲載しているとしてGoogleを提訴した。GoogleはViacomとの係争を継続する一方で、YouTubeで利益を上げる方法を模索しながら2009年を迎えることになった。さらに傷口に塩を塗り込むかのように、Warner Music GroupとYouTubeとのコンテンツ提携の更新をめぐる交渉も行き詰まっている。
GoogleがYouTubeで収益化を実現すること
これはまだ実現されていないが、Googleのビデオ共有部門であるYouTubeは現在、Google検索全体の4分の1を占めるまでになっている。またYouTubeは今年、スポンサー付きビデオ広告機能を導入した。ただし、この取り組みの成果は明らかにされていない。
Googleがモバイル向けソーシャル広告メカニズムを拡充すること
これに関しては、Googleの打率は5割である。Googleはソーシャル分野でわたしの期待を裏切ったが、その意味では、FacebookやMySpaceなどのソーシャルネットワークも同じだ。2008年も終わりが近づくにつれ、ソーシャル広告は成功しないという声は大きくなるばかりだ。しかしGoogleは12月に汚名を返上した。AdWordsの広告主が「フルWebブラウザ」を搭載したAppleのiPhoneやT-Mobile G1などの携帯端末にデスクトップ向けのテキスト/画像広告を表示できるようにしたのだ。
GoogleがPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)に積極的に取り組むこと
わたしは特に、GoogleのWebサービスプラットフォームがAmazon Web Servicesに対抗するのを望んでいた。この期待は裏切られたが、Google App Engineは優れたビルディングブロックであり、最近になってSalesforce.comやZohoで利用されるようになった。
Googleが総合的な検索にとどまらず、高度なWeb検索、セマンテック検索、コンテキスト検索の分野に踏み込むこと
これは高望みなのかもしれない。「SearchWiki」で妥協することとしよう。SearchWikiは、ユーザーが検索結果をカスタマイズすることによって自分専用のコンテキストを作成することを可能にする機能で、そのユーザーやほかのユーザーによる検索の結果にカスタマイズ内容を反映させることができる。
Googleが米国および海外の政府との間でプライバシー問題を解決すること
Googleは9月、検索ユーザーのログデータの保存期間を18カ月間から9カ月間に短縮した。また先週には、Yahoo!が保存期間を13カ月間から3カ月間に短縮した。GoogleとMicrosoftが3カ月間からさらに短縮するかどうか興味深いところだ。というのも、これらの検索大手3社は2009年2月に、データ保存期間とプライバシー問題に関して欧州委員会と会合を開くことになっているからだ。Googleは、バラク・オバマ米次期大統領がプライバシー分野でブッシュ政権よりも寛容な姿勢で臨むのを期待しているようだ。
Googleが優秀な人材の流出に歯止めをかけること
Googleは今年、多数の従業員をFacebookに奪われた。流出したスタッフには、ギディオン・ユー氏、イーサン・ビアード氏、ジャスティン・ローゼンスタイン氏、ベン・リン氏、シェリル・サンドバーグ氏、エリオット・シュラージ氏などが含まれる。人材流出の勢いは衰えたようだ。この冬の景気の冷え込みが雇用の流動化にブレーキをかけたのは明らかだ。Googleの成長のカギを握るのは、優れた検索アルゴリズムと強固なビジネスモデルを作成する能力を持った人材である。Googleは2009年も引き続き、人材の拡充を図る必要がある。
わたしのウィッシュリストは以上で全部だ。Googleがその多くを実現できなかったのは明らかだが、これに関してわたしは2つの結論を引き出した(両者は互いに関連している)。その1つは、Googleの2008年の出足が好調だっただけに、後半に大きな期待をかけ過ぎたということだ。
もう1つは、9月にウォール街の金融危機が深刻化する前にこのウィッシュリストを作成したことだ。金融危機の影響はその後、シリコンバレーにも及んだ。
Googleはわたしを含め一部の人々の期待を裏切ったかもしれないが、この景気後退を考えれば、要求レベルを高く設定しすぎたようだ。こういった突発的な要因が発生するので将来を予測するのが難しいのである。
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