消費者の買い控え傾向は追い風だ「2009 逆風に立ち向かう企業」カカクコム(1/2 ページ)

価格比較サイトを運営するカカクコムは、景気後退により買い控えが鮮明になりつつある消費者の「買い物を失敗したくない」という心理をすくい上げ、右肩上がりの成長を続けている。安田幹広取締役COOは「商品に対する消費者の目は鋭くなる傾向にあるが、これは追い風だ」と言い切る。

» 2009年01月06日 08時00分 公開
[聞き手:藤村能光,ITmedia]

 景気の悪化により消費者が買い控えの傾向にある中、インターネットの特性を生かした購買支援サイトの運営で成長を遂げているのがカカクコムだ。購買行動を起こすための情報を価格比較や口コミの形で提供するビジネスモデルが受け、同社が運営するグループサイトは2008年11月現在、月間2747万人(前年同月比42.6%増)の利用者を集めている。「景気減速によって消費者の目は鋭くなっているが、これは追い風」と自信をのぞかせるカカクコムの安田幹広取締役COOに、成長の原動力や今後の展望を語ってもらった。

image カカクコムの安田幹広取締役COO

ITmedia 2008年を振り返っていかがでしたか。

安田 これまで主軸だったPCやカメラ、家電製品といった耐久消費財だけでなく、消費財や食品などのカテゴリーに重点を置いたサイト作りに力を入れました。2007年に行った価格比較サイト「価格.com」の大リニューアルから、価格比較だけでなく「オンラインショッピングといえばカカクコム」というイメージを浸透させるにはどうすればいいかを考え抜いた1年でした。

 リニューアルに当たり、ユーザーにとって目当ての商品が探しやすい、買い物がしやすいという点を意識したサイト作りを心掛けました。ロゴやアイコンを変えるといった基本的な部分から、ユーザーのサイト内での動線を分析して、クリックしてもらいやすい場所にコンテンツを配置するといった改良を重ねました。リニューアル以降はページビューも右肩上がりで、買うという行動を起こしてもらいやすいWebサイトに進化できたと実感しています。

 特に好調だったのは、2005年に開始した口コミグルメサイト「食べログ」です。街中だけでなく、政令指定都市や観光スポットなどの情報も幅広く取り上げたことで、ユーザーの口コミによるレビューも増えました。レストランなどを格付けする「ミシュランガイド」のヒットなど、グルメに対するユーザーの関心が一層深まったのではないでしょうか。現在730万人以上が訪れるサイトに成長しました。

ITmedia 2008年後半に起こった金融危機に端を発する景気後退により、カカクコムを取り巻く環境はどう変化したのでしょうか。

image 「購買行動を支援するために、商品の詳細なデータベースを作り、顧客満足を生み出すのが使命」と語る安田氏

安田 インターネット広告という分野で見ると、金融恐慌を受け、多くの企業が広告の出稿を控え始めている印象を受けます。人材紹介や転職の広告などをインターネット上で展開している人材業界の企業は、このあおりを受けているといえるでしょう。

 カカクコムは、価格.comや食べログ、旅行情報の口コミサイト「フォートラベル」など、多岐にわたる分野の媒体を運営しています。新築マンションといった情報を扱う不動産分野では利益面で多少影響を受けたものの、全体で見ると堅調に成長しています。

 商品の比較やレストランの口コミなど、カカクコムが提供する情報はユーザーの購買行動を後押しするものです。出稿をしていただく企業からは、広告費というよりは販売促進費をいただくというイメージで、特に景気の変動がビジネスモデルを圧迫したということもありませんでした。

ITmedia 不景気が消費者の買い控えを導きつつあります。カカクコムのユーザーの消費行動に変化は現れましたか。

安田 景気の減速に伴い「買い物に失敗したくない」と考えるユーザーが増えたように思います。価格.comでは口コミ情報の閲覧が増え、価格比較情報と半々の割合になりました。リニューアル前は、価格比較を参考にするユーザーが8割を占めていたことを考えると、インターネットの特性を生かした“賢い買い物”をするようになったのでしょう。

 「Yahoo!ショッピング」や「楽天市場」などのオンラインショッピングが2割以上の成長を遂げているなど、EC(電子商取引)関連の市場も好調です。その裏には、インターネットを通じてほぼ何でも買えるようになった背景があると思います。生鮮食品をインターネットから注文できる「ネットスーパー」もユーザーの獲得に成功しています。

 思い返せば、ドットコムバブルがはじけた後に、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などが栄え、インターネットを使ってじっくりと情報を調べたり、その情報をまとめて発信したりするスタイルが生まれました。こうした流れが、インターネットで価格を比較するという今の購買行動のスタイルに結びついたのかもしれません。

 このように、景気の変動が新たな消費行動を生みだします。小型ノートPCを2台目のPCとして買う、秋冬モデルよりも1世代前のモデルの薄型テレビが売れ筋になるといった動きは、それを象徴しているでしょう。

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