「Excelでどうにかならないか」――中小企業IT支援のミスマッチIT Oasis(1/2 ページ)

中小企業へのIT支援の枠組みはさまざまな形で進められている。不況が深刻化する中、こうした動きは非常に重要だ。しかし、支援する側とされる側の間でニーズのミスマッチはどうしても起こる。具体例を挙げて見てみよう。

» 2009年02月04日 12時51分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

ハードルの高いデータベース

 中小企業庁は最近、中小企業の経営革新を図るためのIT活用の促進や社内IT人材の育成を積極的に推し進めている。「IT経営」という言葉もかなり浸透してきたようである。目玉の1つは「中小企業CIO育成支援アドバイザー制度」の創設。中小企業が自社でCIOを育てたいと思ったときに専門家が支援に来てくれる制度である。このほかにも中小企業の悩み全般に応える「地域力連携拠点事業」や地域ITユーザーとITベンダーのビジネスマッチングを支援する「地域イノベーションパートナーシップ推進事業」も始めている。

 しかし、中小企業を見わたしてみるとIT経営やCIOなどとは縁もゆかりもなさそうな実態がいくつもころがっている。そんなIT未満、IT以前のお話をいくつかご紹介しよう。

 ある機械部品製造会社。保全管理担当のBさんから保守管理をIT化できないかという相談があった。管理の担当者が減速機への給油やチェーンブロックの動作、ワイヤーチェックなどを日常点検しているが、点検結果を活用すれば故障頻度の高い機械のリプレースなどに使えるのではないか。また、日常点検も担当者が○とか×を付けているだけなので、本当に点検しているのか分からない。これを確認する方法は出来ないだろうかという話である。

「ご予算は?」まずは率直に聞いてみた。

「PCにExcelが入っているのですが、それで何とかしたいのです。予算はありません。社長に言ったって、それは君たちの仕事で、そのために給料を払っているのだろうと言われるに決まっています」

 Excelでもできないことはないかもしれない。しかし、それは自分で作って、自分で納得して使うときの話である。他人の支援を受けるとなると要求は増大し、欲望は膨らむ。あれもしたい、これもしたい、ここは何とかならんのかということになる。

「データベース使ったことないですよね」

「データベース?」

「Accessとかありますかね」

「調べてみます」

 といって担当者はPCを見に行ったが、ないみたいですと言って帰ってきた。

「データベースやってみますか?」

「……」

 Officeシリーズで言うと、中小企業で足し算、掛け算、合計のレベルでExcelを使える人は過半数だろう。これがマクロを使えるかとなるとぐっと減る。Wordはどうかというと、あまり文書は書かないので、使える人は少ないと言っていいだろう。文章をExcelで書く人も多いのである。PowerPointとなるとさらに使える人は少なくなる。プレゼンの機会が少ないからである。

 Accessはもっと少ないだろう。データベースは結果が見えるまでの作業が長い。主たる作業がPC操作という人でないと使いこなす時間が取れないだろう。この件はAccessの入手方法や参考書のありか、習得するのに普通免許を取るくらいの時間がかかることなどを助言して終了した。中小企業にとって、業務レベルでデータベースを扱うのはまだハードルが高い。

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