「女性の共感」で販促の活路を切り開く――ライオン勝ち残る企業のWebプロモーション(1/2 ページ)

Webによる販売促進の強化を狙うライオンは、同社初となる本格的なWebプロモーションを展開し始めた。テレビや雑誌への広告出稿といった販売促進の柱に、Webプロモーションを新たに据える。この取り組みはライオンの売り上げを拡大させるための試金石になる。

» 2009年03月10日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「同業他社に比べてWebプロモーションの立ち上げが遅れていたブランドがあった」。ライオンの宣伝部で副主任部員を務める石田健一氏はこう話す。衣料用洗剤やシャンプーなどの日用品を数多く販売しているライオンだが、Webを使った販売促進では有効な施策を打ちあぐねていた。

 ライオンは、テレビや雑誌への広告出稿、試供品の提供などを販売促進の柱としてきた。近年はポータルサイトにバナー広告を出稿したり、商品のブログパーツを作成したりするなど、Webを使った商品の認知度向上に手を打ってきた。だがほかの企業もこうした施策を打っており、「その間に他社は専用のWebサイトを開設して、商品のWebプロモーションを次々と打ち出していた」(石田氏)。

うるばな。のトップページ うるばな。のトップページ

 そんな立場にあったライオンが2月に動いた。2008年1月に発売したバススキンケア用品「BATHTOLOGY」をアピールする専用サイト「うるばな。」を開設した。同社にとって初となる本格的なWebプロモーションだ。

 BATHTOLOGYが対象とするF1(20〜34歳の女性)層は、商品への愛着やブランドの認知度で商品の購入を決める傾向にある。女性向けの商品に対するこうした特性を狙い、Webプロモーションを展開することで、商品の売り上げを拡大するのが狙いだ。

口コミやブログが売り上げに直結する

 女性向け美容品の売れ行きは、口コミやブログへの書き込みによって大きく左右される。これまでの販売経験からこうした特性をつかんでいたライオンは、BATHTOLOGYの発売前に先手を打った。化粧品情報サイト「@cosme」におけるモニターキャンペーンや女性向け雑誌への試供品の挟み込みを強化したのだ。

 モニターには、募集数の10倍となる1万人の応募が集まった。また、試供品を試した人の多くが、その感想を自身のブログに書き込んだ。その結果、「Web上に散らばったこうした情報からBATHTOLOGYを購入した人も多かった」(宣伝部の神田正樹主任部員)という。流行に敏感な女性の購買意欲を刺激する「種まき」から、「対象が絞り込まれたブランドの認知が購入と大きく関係する」(神田氏)ことが分かった。

 継続してBATHTOLOGYを購入してもらうためのブランド作りを徹底する――。ライオンはこれまでの体験を基に、次なるブランド作りの施策として、これまで取り組みきれていなかったWebプロモーションの展開に踏み切った。

泡のインタフェースで世界観を体験してもらう

 うるばな。は、心が潤った体験を投稿フォームから入力すると、それが泡になって表示されるコンテンツで、CGM(ユーザー参加型メディア)型のWebサイトだ。泡にカーソルをあてると投稿の内容が表示される。読者が投稿内容に共感し、「ほっこりする」というボタンをクリックすると、共感の数に応じて泡が膨らむ仕掛けになっている。共感を集めた投稿をランキング形式で表示したり、どの地域の投稿が多いかを日本地図上で確認したりできる機能も取り入れた。

 泡を基調としたコンテンツを作った理由は「BATHTOLOGYの世界観を体感してもらう」(ライオン、ヘルスケア事業部ビューティケア事業部の西倉莉加氏)ため。誰でも簡単に投稿してもらえるように、遊び心を取り入れてWebサイトを設計した。目標とするページビュー(閲覧数)は80万。「今回の取り組みが商品の売り上げにつながれば、各ブランドの商品ごとにWebプロモーションやコミュニティー作りを横展開する」(神田氏)考えだ。

泡にカーソルをあてると投稿の内容を確認できるどの地域での投稿が多いかを視覚的に確認できる 泡にカーソルをあてると投稿の内容を確認できる(左)。どの地域での投稿が多いかを視覚的に確認できる機能もある(右)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ