わが社のコスト削減

内線電話を社外に持ち出す――通話料を下げるPHSの新たな利用わが社のコスト削減(2/3 ページ)

» 2009年04月23日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

「やりたかった環境をほぼ実現できた」

「W-VPNにはほぼ満足している」と話す是永氏

 東京ガスリックリビングは、ガス機器の販売や設置、保守、リフォーム、ガスの開閉などを行うサービス会社として2006年1月に設立。前身は明治時代からガス工事など行うリックのサービス部門(通称「エネスタ」)で、2008年に東京ガスが資本参加した。現在では東京都港区と狛江市を営業エリアとして、エリア内の顧客ニーズに対応している。

 同社がW-VPNサービスを導入したきっかけは、東京ガスが「ライフバル」という地域密着型サービスを始めたことによる。ライフバルは地域の顧客対応を原則として1つのサービス会社が受け持つ仕組みで、従来は工事などで対応した顧客からの問い合わせが中心だったが、新サービスの導入で対応しなければならない問い合わせ内容や顧客層が大幅に広がった。

 企画室の是永哲治室長は、「業務内容が多様化しても可能な限り顧客を待たせないようにできる仕組みを探していたところ、システムサービス会社からコストを掛けずに連絡効率を高められるとしてW-VPNを提案してもらった」と導入の経緯を話す。

複雑な施設環境にも対応

 港区にある同社の本社ビルでは、7階までの各フロアに担当者や業務内容が分かれており、各階ごとに電話回線を設置していた。従来の顧客対応では、内容に応じて各階の担当者が対応する仕組みだったが、新体制では東京ガスの「新宿お客様センター」で一括して受け、センターから同社に転送する仕組みになった。

 この際、センターから同社に転送しても、フロアが分かれていることや担当者の所在が不明な場合もあり、顧客を長時間待たせたり、再度連絡をしてもらったりしなければならないなど、対応ロスが生じる問題があった。

 W-VPNでは、社内から内線番号をプッシュして相手先が在席していれば自動的に社内で転送し、外出していればPBXがPHS端末へ転送する。これにより、相手先がPHSのサービスエリア外にいる場合などを除いて通話できるようになり、転送を繰り返したり、顧客を長時間待たせたりするなどのロスが大幅に減ったという。

 また、狛江市でのサービスを担当する部門は2つのビルに拠点が分かれているものの、同社では2つのビルを専用線でつなぎ、新宿お客様センターからの連絡がどちらのビルにあっても、W-VPN経由ですぐに担当者へ転送できるようにした。

 同社のケースでは、W-VPNサービスに加えて顧客対応のフローを改善する狙いもあったために電話設備全体を更新した。導入コストは3拠点全体で3000万円近くになった。なお、以前は社外にいる担当者に携帯電話やPHSを支給していたが、W-VPN導入後はPHSだけになり、通話コストは1回線あたり月額で2000〜3000円程度削減した。PBXの入れ替えを伴わない場合は、より少ない投資で導入可能だ。

 現在は202台のPHS端末を利用し、通話コストの削減効果が月間で44〜66万円、年間では528〜792万円になる。投資額は3〜4年程度で回収できる見込みであり、PBXの運用期間(一般的に5〜7年程度)からみても、十分な投資効果を得られるとしている。

 「当初は携帯電話会社の仕組みも検討していたが、PHSは端末本体で固定電話と同じように保留や転送などの操作が簡単にできるため、従業員が使いやすい。顧客対応をスピードアップするという環境を実現できたのが大きい」と是永氏は話している。

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