政府が先週、事実上の「景気底打ち」宣言をした中で、企業のIT投資の行方は? 折しも先週、IDC Japanが発表した国内産業分野別IT投資動向をもとに考察したい。
政府が先週17日に発表した6月の月例経済報告で、景気の基調判断から「悪化」という表現を7カ月ぶりに削除し、事実上の「景気底打ち」を宣言した。
「景気底打ち」判断の根拠となったのは、企業の生産や輸出に回復の兆しが現れ、個人消費も一部で景気対策の効果が出始めていることからだ。
企業の生産回復を示したのは、4月の鉱工業生産指数の伸び。前月比で5.9%上昇し、過去2番目の高い伸び率を記録した。中国向け輸出の持ち直しが、その生産回復を後押ししている。内需の柱である個人消費も、エコカー減税の効果などで4月以降は自動車の新車販売台数が前月比で増加に転じている。
ただ、生産や輸出の水準自体は昨秋から3割以上も減っており、景気が本格回復に向かう実感は乏しい。4月の失業率は5%に達し、有効求人倍率は過去最悪の水準。夏のボーナスも含め所得も伸びず、個人消費が力強く回復することも期待しにくい。こうした雇用・所得環境の悪化は、景気対策に支えられた内需を腰折れさせかねない。
今回の政府の景気底打ち宣言には、過去最大規模の経済対策の効果と実績の演出、さらには総選挙対策といった思惑があるといわれるが、そうした論議は他稿に任せるとして、底打ち宣言で企業の投資抑制や個人消費の委縮を食い止めたい、との狙いもあるだろう。
では、政府が景気底打ちを宣言した中で、企業のIT投資はこれからどのように推移していくのだろうか。折しも先週16日、IDC Japanが国内産業分野別IT投資動向と今後5年間の市場規模予測を発表したので、それをもとに考察してみたい。
IDC Japanによると、2009年の国内IT市場規模は前年比3.8%減の12兆1770億円になると予測。また、2008年から2013年までの年間平均成長率は0.1%減で、2013年のIT市場規模を12兆6265億円と予測している。
つまりは、国内IT市場規模は2013年までの期間でみると、ほぼ横ばいで推移するというわけだ。図はその推移を、産業分野別IT投資動向の観点から描いたものである。IDC Japanでは、2009年の国内IT投資は「ほぼすべての産業分野においてマイナス成長に落ち込む」とみている。以下、産業分野別にもう少し詳しくみていこう。
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