政府が「景気底打ち」宣言、企業のIT投資はどうなる?Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年06月22日 11時39分 公開
[松岡功ITmedia]
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まだら模様の2009年産業分野別IT投資

 IDC Japanによると、2009年の国内IT投資は、特に輸出の減速に苦しむ組み立て製造(前年比7.6%減)、プロセス製造(同4.5%減)、および金融危機に伴う市場の低迷に苦しむ証券・その他の金融(同7.1%減)、銀行(同5.3%減)などの減少幅が大きくなるとみている。

 その一方で、医療分野では、2012年4月から原則義務化されるレセプトのオンライン化対応と、それに伴う医療情報ネットワークの構築などによって、2009年もプラス成長を維持(同0.2%増)すると予測している。

 また、官公庁も税収減によって一部の投資は抑制されるものの、中央官庁の業務およびシステム最適化プロジェクトなどが進捗することから、医療と同様プラス成長を維持(同0.5%増)すると予測している。

 なお、医療、官公庁、および教育の分野においては、2009年4月に発表された「デジタル新時代に向けた新たな戦略 〜三カ年緊急プラン〜」、および2009年5月に可決された「平成21年度補正予算」によってIT投資が拡大することが期待されるとしている。

 さらに各産業分野ともに、金融商品取引法施行に伴う内部統制強化に加えて、会計コンバージェンス対応、製品安全法制、環境法制、および労務管理など、より幅広い分野でのコンプライアンス対応が求められていると指摘。したがってコンプライアンス対応を目的としたIT投資は今後も継続すると予測している。

 加えて流通、サービスなど内需型の産業分野では、売り上げ拡大を目指してeコマース関連のIT投資が堅調に推移するとみている。

 今回の予測リポートをまとめたIDC Japan ITスペンディング リサーチアナリストの市村仁氏はこう語っている。

 「景気低迷によって多くの企業の業績が悪化しており、各企業はキャッシュフローの確保のために、IT投資を最小限にとどめている。こうした状況においてITベンダーがユーザー企業からIT投資を引き出すためには、『即効性のあるコスト削減』をアピールできるソリューションを早急に整備することが求められる」

 企業のIT投資は、景気の波の影響を半年遅れて受けるといわれる。ITベンダー各社の業績予測でも、2009年度を厳しく捉えているのはその表れだろう。そうした中で、今回の政府の底打ち宣言がどのようなインパクトを与えるか、注視しておきたい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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