システム再構築における「インフォームドコンセント」ダウンサイジング決意の瞬間(1/2 ページ)

佐川急便とIT子会社の佐川コンピューター・システムは、ベンダー依存の高コスト構造から脱却し、システム再構築によるオープン化を進めることで、累計数百億円規模の攻めのIT投資余力を生み出そうとしている。

» 2009年06月25日 19時11分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

2015年度には110億円の戦略投資余力を稼ぎ出す

 創業50周年の2007年からサービス名を新たにした飛脚宅配便や、代金引換サービスのe-コレクトなどが好調で、業界1位のヤマト運輸を猛追する佐川急便は、「投資すべきものには迷わず投資し、抑制できるものには徹底的に抑制する」(現在の近藤宣晃代表取締役専務執行役員の言葉)といった理念を創業当時から徹底し、顧客から選ばれることを至上命題としてきた。

 そのため、同社は新サービスをより早く提供する攻めの投資と、当たり前になったサービスをより安く提供する守りの投資を明確に分け、守りのサービスに再投資をして攻めの投資に変えていくことをITで実現しようとしている。

「オープン化を実現し高コスト構造から脱却することが現在の最大のテーマ」と語る佐川コンピューター・システム(SCS)の三原渉氏

 「佐川急便は現在、システム再構築つまりダウンサイジングを目指し、2004年度を基準年としてサービスレベルのランニングコストを削減する。2015年度には約4割強圧縮し、110億円の戦略投資余力を稼ぎ出し、それを攻めの投資に使おうとしている」

 6月4日のHP Open system seminarで、佐川コンピューター・システム(SCS)の取締役を務める三原渉氏が、佐川急便で進行中のシステム再構築と戦略投資の考え方についてそのように説明した。

 SCSは、佐川急便の東京店電算室(後の情報システム室)起点に、1985年に導入した全国貨物追跡システム開発を期にIT子会社として発足。現在は、SGホールディングスグループ(佐川急便やSCSを含めたグループ)における情報システムのコンサルティングや構築、運用・管理を担う一方で、情報戦略のシンクタンク企業としての軸足を持つ。

現状のホスト依存からオープン化を進めることで、5年後の2015年度に110億円の戦略投資余力を生み出し、攻めのIT投資に振り向けるという

いつしかシステムの7割がホストベースとなり主導権を喪失

 佐川急便は、1974年から物流業界に先駆けて第1次情報化施策を開始。全国貨物追跡システム(1985年)や代引管理システム(1986年)、路線管理システム(1989年)などの情報基盤を構築していく。

 1990年からの第2次では、勘定系業務システム連携・統合をテーマに、全国佐川メールシステムや伝票レス集配システム(1991年)、データベース構築、統一マスタシステム、全国統一インターネット基盤構築(1999年)など急速にIT化が進展。

 2000年ごろからは第3次として情報共有基盤整備に軸足を移し、携帯電話インターネット貨物追跡システム、荷物お問い合わせサービス、配達完了E-mailサービス、e-コレクト、総合インフォメーションシステムなどの構築をはじめ、統合グループウェア(2001年)やWeb-EDIの導入(2002年)などが次々に行われていった。

 そして現在は、第4次としてリアルタイム環境の実現に向けてシステム再構築を行っている最中だ。しかし、2004年当時、同社のシステム構成はホストコンピュータベースのものが69%を占め、ホストの上でしか動かないアプリケーションが同社自身の主導権の喪失、あるいはベンダー主導の元凶となっていた。

佐川急便の2004年度の年間投資割合では、全システムの7割近くがホストをベースにしており、それをオープン化し低コスト構造にシフトすることが最大のテーマ
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