めまぐるしく変化する環境に対応し、業務の効率化やコスト削減を達成するため、企業の情報システムが「利用」の形態に変化しつつある。それに伴い成長を遂げるSaaS/PaaS市場をアナリストが分析する。
めまぐるしく変化するビジネス環境に対応し、業務の効率化やコスト削減を達成するため、企業の情報システムが「所有」から「利用」の形態に変化しつつある。インハウス型からアウトソーシング型、さらにはオンデマンド型への移行が進む中、システムの利用形態としてSaaS(サービスとしてのソフトウェア)やPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)への期待も日増しに強くなるばかりだ。
国内における2008年度のSaaS/PaaS市場規模は708億円(SaaS:685億円、PaaS:23億円)だった。その後も著しい成長が続き、2009年度には864億円にまで拡大する見通しだ。短期間で安価にサービスを利用できる点や運用管理の手間が不要となる点が支持を集め、新たな情報システムの利用形態として普及が進む。結果、2013年度には1551億円(対2008年度比219.1%)の市場規模に達すると予測される。
同市場の拡大要因は、スクラッチシステムやパッケージ製品からの乗り換え、新規参入事業者の増加、PaaS市場の本格的な立ち上がり――がある。一方で同市場の拡大を阻害する要因としては、景気後退による企業のIT投資への抑制やパッケージベンダーにおけるSaaSへの取り組みの停滞――が挙がる。
業種別に市場規模を見ると、2008年度は「サービス他」の分野が40%超を占めてトップになった。以下、「製造」「物流」「金融」の分野が続く。SaaS/PaaSはすでにさまざまなサービスが登場しており、特定の業種に偏らない利用が広がっていることが分かる。
2009年度は、景気後退の影響から製造業の需要停滞が見込まれる一方、「流通」「サービス他」の分野が大きく伸びる見通しだ。2010年度以降は、引き続き「流通」「サービス他」の分野で継続的な需要が見込まれるほか、景気回復とともに製造業のSaaS/PaaSへの投資が活発化していく。
規模別で見ると、中規模(100〜999人)が市場規模全体の40%を占めており、大規模(1000人以上)の企業が続く。中規模は大きく数百人規模の中堅企業と100〜200人程度の中小企業に分けられる。前者は大規模企業と同じく、部門導入をきっかけにSaaS/PaaSの利用を開始するケースが多く、フロントオフィス系や情報系アプリケーションを中心した利用が進んでいる。
小規模企業(99人未満)では、コスト面がネックとなり業務パッケージやシステムの導入を見送っていたが、低コストで業務アプリケーションを利用できるSaaSが登場したことで、導入が進んでいる。10人未満のSOHO(Small Office Home Office)規模の企業では、業務アプリケーション利用の需要が限られているほか、現状で効率的な販売体制を確立している事業者が少ないことなどから、将来的な普及は困難であるとの見方が多い。
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