アクセンチュアは近年、「多極化する世界(Multi-Polar-World)」というキーワードを提唱している。多極化する世界においては、従来の日欧米の三極体制から、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興国がグローバルエコノミーにおける存在感を急速に増した結果、「新たな市場の誕生」「イノベーションの拡散」「新たな資本の流れ」「優秀な人材の獲得競争」「資源をめぐる戦い」が起こり、企業はグローバルでの企業活動を再定義し、効果と効率を求めた大規模な機能の再配置が必要となっている。これを典型的な日本の製造業を例にとって考えてみよう。
1970年代ごろまでの日本の製造業は、製造した製品を海外に輸出し、代理店もしくは一部の現地法人を通じて販売するという単純な構図であった。これが1980年代から1990年代になると、多くの企業はコスト競争力を維持するために製造拠点の海外展開を進め、国別・地域別の販売拠点や物流拠点の整備を進めた。さらに2000年以降は、新興国を含めた新たな市場で勝っていくための研究開発やマーケティングの拠点を海外に移してきた。
この間に、研究開発、製造、マーケティング、販売などの機能を、グローバル規模で最適配置する動きが進んだといえる。ただし現在においても、財務経理、人事、調達といった機能は国別、子会社別に存在するものの、グローバルの視野でどこに配置するのが最適かといった観点での検討に至っていないのが実情である。
よって今後のBPOの潮流は、この多極化する世界の流れに沿って考えるべきである。実際、アクセンチュアがお手伝いするアウトソーシングも、グローバル企業の世界各国に分散している財務経理、人事、調達といった業務を、最適なスキル(業務スキル・テクノロジースキル・言語など)やコストを踏まえて、世界中で最適な拠点に集約して配置していくといった仕事が多い。
特に経理業務についてはIFRS(国際会計基準)など会計基準標準化の影響もあり、グローバルでの業務標準化の流れが加速すると考えている。今後、財務経理部門の業務は世界的に標準化を進める必要があるが、その標準化を進める上で、鍵となるのがBPOの活用である。既に世界に拠点を構築しているアクセンチュアをはじめとするアウトソーサーは、現在、国別にバラバラになっている財務経理業務をまとめて受託するとともに、国を跨いだ業務の標準化を進めることができる。
その結果として、財務経理のオペレーションを行う拠点は中国やインドをはじめとするBPOに積極的な幾つかの国に集約され、標準化された業務を高効率、かつ低コストで遂行することになる。
この段階で、会計に関する従来の法令や基準は世界標準のプロセスとシステムの中に取り込まれ、各企業が個別に意識する必要がなくなっている。また財務経理のアウトソーシング市場は成熟し、世界の主要企業が築いてきたシェアド・サービス・センターも統合され、規模の拡大とプロセスの専門化が進んでいる。市場は、大手のアウトソーサーが世界規模のサービス提供綱を活用して、コストと品質を競っている。さらに企業内に残った財務経理機能は、より高度なグローバルでの財務経理戦略や、社内での投資マネジメント業務に専念することで、企業により大きな付加価値をもたらすのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.