Oracleの対IBM「宣戦布告」広告の背景Weekly Memo(1/2 ページ)

Sunの買収を発表したOracleが先週、新聞広告を通じてSPARC/Solarisへの投資強化とともに、宿敵IBMへの「宣戦布告」のメッセージを発信した。その背景を探ってみたい。

» 2009年09月14日 09時14分 公開
[松岡功ITmedia]

懸念されるSPARC/Solarisシステムの顧客離れ

 「われわれは勝利を目指して進む。IBMよ、ハードウェア事業で戦うことを楽しみにしている」

 Oracleが先週、新聞広告を通じてラリー・エリソンCEOの記名入りでこんなメッセージを発信した。まさに宿敵IBMに真っ向から「宣戦布告」した格好だ。

 もっとも広告内容の柱は、Oracleが今年4月に買収を発表したSun Microsystemsの顧客に向けたメッセージである。

 そこには、Sunの主力プラットフォームであるSPARC/Solarisの開発に、これまでSunが行ってきた以上の資金を投入するとともに、Oracleのソフトウェアを組み込むことでSunのハードウェア性能を飛躍的に向上させることなどがうたわれている。

 そうしたOracleの今後の計画を明確にしたうえで、冒頭のようなIBMへの宣戦布告メッセージが記されている。

 こうしたライバル心をむき出しにした広告は、欧米では珍しくないが、今回のOracleの広告は背景に同社のいろんな思惑や状況が見え隠れしていて興味深い。

 まず、Oracleはなぜ、このタイミングでこのような広告を打ったのか。同社からすると、10月11日からサンフランシスコで開催する「Oracle OpenWorld 2009」に向けたメッセージの一環のようだ。

 ただ、Sunの買収については現在、欧州連合(EU)の欧州委員会がEU競争法(独占禁止法)に基づいて調査を行っており、まだ完了していない。

Oracleの新聞広告

 そうした中で、いま最も懸念されるのがSPARC/Solarisシステムの顧客離れだ。「プラットフォームで一番心配なのは、そのベンダーの事業継続性。そこを見極めるのが私の役目」とは、筆者がある大手企業のCIOから聞いた言葉だが、今回のような買収の動きがあると、そうしたユーザーの不安は増すばかりとなる。

 もちろん、Oracleも手をこまねいていたわけではない。Sunの買収を発表した後、まもなくエリソンCEOがメディアの取材を通じてハードウェア事業の継続を明言し、SunのプラットフォームとOracleのソフトウェアを統合することが付加価値の提供につながると主張した。

 それでも買収の手続きが長引く中でOracleが具体的な手を打てないこともあって、ハードウェア事業に対するOracleの「本気」を疑う声が囁かれ続けているのも事実だ。

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