情報家電を取巻く環境は、家庭の内外で接続されるネットワークインフラの充実、開発効率化のためのプラットフォームの汎用化、リッチコンテンツを扱うための端末の高機能・多機能化がある。これらはネットワークやプラットフォーム、コンテンツそれぞれのオープン化であり、同時にセキュリティ脅威を醸成する最低条件を満たしていると言えよう。
多くのユーザーや機器がつながることで、その仕様も公開・共有されるようになり(汎用プラットフォーム化)、コンテンツをオープンで自由に作成・配信できるようになる。しかし、同時にセキュリティの脅威も簡単に広がってしまう。
例えば、ユーザーから見た場合にPCやテレビは情報を送受信して楽しむための端末であっても、ワームなどの不正プログラムにとっては、このようなオープン環境にある端末はすべて単なるIPホストにすぎないのだ。情報家電は、これまでの閉ざされた環境から多くのセキュリティの脅威に晒されるオープンな環境へ大きく変化しようとしている。
情報家電のセキュリティ対策を考える上で、これまでPCの世界で培われたノウハウが役立つだろう。しかし、ノウハウをそのまま家電の世界に適用できるわけではない。情報家電はPCに比べてより生活に密着しており、多くの人々が利用するツールである。家電に求められるのはPCのような複雑な設定や特別な知識ではなく、誰もが簡単で安心して使えることだろう。
情報家電の安全性を高めるには、ユーザーだけでなく、メーカーにもその理解と取り組みが求められる。さらには既存のセキュリティベンダーも、これまでのIT業界の常識とは違う家電の使われ方や文化を考慮した対応が必要だ。次回以降、情報家電のセキュリティ脅威について具体的な事例を検証しながら、セキュリティを保つ上で検討すべきポイントとフレームワークを提示する。
トレンドマイクロ株式会社事業開発部 部長。大手OA機器メーカーにて、営業およびマーケティングを経験後、米国に留学。経営学および情報技術科学の修士号を取得後、外資系コンサルティング会社にて、製造や通信、放送業界を中心に、事業戦略、事業開発、業務改革等のビジネスコンサルティングに従事。現在はトレンドマイクロ株式会社事業開発部の部長として、ビジネス/テクノロジーイノベーションによるグローバルな事業機会探索、開発、運営を担当する。
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