社内ネットカフェでの“幽霊”事件――不特定の人物が使う落とし穴不正事件に学ぶ社内セキュリティの強化策(2/3 ページ)

» 2010年02月24日 07時05分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

思いも寄らない人がやっていた

 店長によれば、インターネット一時ファイルの内容は毎週水曜日の夕方に削除していたそうです。インターネットカフェにはPCが15台ありましたが、うち1台だけがそのスケジュールと削除するタイミングがずれていたことが分かりました。調査を月曜日にしたため、本来であれば前週の水曜日の夕方以降のインターネット一時ファイルがPCに保存されているはずです。しかし、そのPCには前週の金曜日以降の内容しか残っていません。つまり、水曜日の夕方から木曜日までのデータが保存されていなかったのです。

 店長に確認したところ、スケジュール以外の削除は絶対にしていないといい、店長以外の誰かが木曜日のインターネットカフェの閉店間際にデータを削除したのではないかと想定されました。当日は若い女性社員が利用していましたが、インターネット一時ファイルのデータを自分で削除できるようなスキルは持っていなかったといいます。

 ほかにも可能性をいろいろと検証しましたが、最終的にインターネットカフェが閉店した木曜日の深夜に何者かが侵入してPCを操作し、インターネット一時ファイルを消していたという可能性が残りました。そこで、わたしはWebカメラを使って閉店後の様子を録画しようと店長に提案し、店内全体を見渡せるPCにカメラを設置して毎日閉店後から翌朝まで録画するようにお願いしました。

 カメラを設置してから数日間は、真っ暗な店内の画像しかありませんでした。しかし、4日目の深夜1時ごろ、店内が突然明るくなって1人の人物が現れたのです。

その人間は店長が尊敬していた取締役のX氏で、その光景に驚いてしまいました。X氏は1台のPCの前に座り、2時間程ずっと真剣に何かの作業をしていました。その日もX氏は最後に一時ファイルとそれに関連する履歴などを削除し、ごみ箱を空にしてからPCの電源を消していきました。そこでX氏が何をしていたかを調べるため、その場で直ぐにわたしはファイル復元ソフトを使って、X氏が削除したファイルのほとんどを回収したのです。

 その内容はアダルト画像ばかりでした。後に分かったことですが、X氏の家庭ではわいせつなものに触れられない環境だったそうです。X氏はアダルト画像に興味を抱きつつも自宅のPCでは閲覧できないため、深夜に会社のインターネットカフェを密かに利用して画像を閲覧し、その痕跡を削除していたようです。

 この事実が明らかになった後、店長はどのように対応すべきか悩みました。X氏は業界でも有名な人であり、優秀であり実践力や技術力、経営力、指導力などの点で高い評価を得ていました。何よりも店長が尊敬していた人物です。

 結果として、この事実を社長にすべて報告し、X氏の処遇はすべて社長に判断を任せて、どのような判断であっても店長は一切口外しないようにするという対応を決めました。社長もX氏の才能を高く評価しており、X氏の存在は会社にとっても、店長にとっても大きなものでした。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ