クラウドのエンタープライズ利用のタイミングを見極めるクラウドビジネス探訪(1/2 ページ)

NTTコムウェアが2009年夏にサービス提供開始を発表した「SmartCloud(スマートクラウド)」。キャリアグレードのサービスを前提にしたクラウドサービスが生まれた背景とは。

» 2010年02月27日 09時18分 公開
[大西高弘,ITmedia]

DaaSをまず自社内で利用

 キャリアグレードのレベルを確保した上でのグリーンなデータセンターと、ITILベースのシステム運用を基にしたクラウドコンピューティング環境。NTTコムウェアが2009年夏にサービス提供開始を発表した「SmartCloud(スマートクラウド)」を簡単に説明するとそのような形になる。

 NTTコムウェアが自社内にクラウド環境を作り、これとこれまで提供してきたホスティングやハウジングサービスを合わせて1つのサービスメニューとして売り出したわけだ。仮想化技術を活用したクラウドサービスと豊富な実績を持つ物理環境でのサービス。持たざるIT経営を目指すユーザー企業に対して同社のバックグラウンドの深さをアピールする。

SmartCloudのサービスイメージ

 現在は社員の約7割と外部の協働者を含むおよそ4000アカウントを収容するデスクトップサービスを社内システムの「SmartCloud」へ移行しているところだという。このデスクトップサービスはDaaS(Desktop as a Service)と呼ばれるもので、今後開発環境を柔軟にクラウド環境で構築できるサービスなど、エンタープライズ利用のクラウドサービスを順次提供し、2012年度には500億円の売り上げを目指している。

 数百、数千台レベルの社内のクライアントPCの管理工数の多さに悩んでいるユーザー企業にクラウドサービスの利用をアピールした背景について、NTTコムウェアのサービス事業本部 サービスプロバイダ部 担当課長の櫻井 仁氏は次のように語る。

 「OSや各種アプリケーションの更新という管理工数の多さ、セキュリティソフトの費用負担の問題など、『たかがPC、されどPC』とその管理の難しさを表現されるお客様も多いのです。各社員がビジネスの現場で最も頼りにするツールがPCであり、内部統制やセキュリティの観点からも効率的に管理すればTCOをかなり削減できるということにユーザー企業が気付き始めています。そのニーズに応えるのはやはりクラウドという基盤です」

 PCの多くは深夜は電源が切られた状態になる。つまりリソースが空いた状態になるわけで、そのリソースを利用してバッチ処理や大規模シミュレーションを行うといったプランを持つ企業も出現しているという。

 ただし、こうしたケースで問題になるのは、深夜空いたリソースを活用した後、朝再び社員の多くがPCを立ち上げたときに問題なく稼働するかどうかだ。99.999%の信頼性を意味するキャリアグレードを掲げるNTTコムウェアにとって、仮想化技術がユーザーの利用に耐えられるレベルにあるかどうかは大きな問題となる。逆にいえば、仮想化技術がそこまでのレベルに達したと判断したからこそ、SmartCloudのサービス提供を開始したということになる。

 「仮想化製品ベンダー各社が発表する製品ロードマップなどをにらみながら、われわれが求めるお客様へのサービスレベルを確保できるかどうか、時間をかけて検討してきました。当社はお客様のシステムに関して、サーバやストレージの仮想化環境構築は以前からやってきたわけです。ただしそれは個別対応のもの。当然負担していただくコストも高くなる。クラウドサービスでそれをやるわけにいはいかないので、ソフトウェアの可用性のチェックは慎重に行ってきたわけです」(櫻井氏)

 例えば保守作業のために仮想サーバ内にあるクライアントのデータを別の場所に移動したとしても、ユーザーはストレスなく日常業務をこなせるどうか、といったケースでも検証が行われ、満足した結果が得られたという。

 ちなみにこのデスクトップサービスは電源を落とせばデータがクライアント内に残らないシンクライアント端末でも、通常のPCでも利用できるという。

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