経営説明会で社長交代を発表したNECの思惑Weekly Memo(1/2 ページ)

NECは先週、もともと予定されていた中期経営計画の説明会で急きょ社長交代を発表し、次期社長が同計画の説明に立った。意表を突いたこの演出に込めた同社の思惑とは――。

» 2010年03月01日 12時10分 公開
[松岡功ITmedia]

次期社長が中期経営計画を説明

 「本日発表する中期経営計画は、C&Cクラウド戦略を中核としたサービス事業やグローバル展開に注力しながら、自動車用の電池などの新規事業を立ち上げていくことで、2012年度に売上高4兆円、営業利益2000億円、ROE(株主資本利益率)10%といった経営目標の達成を目指すものだ」

 NECの矢野薫社長は、同社が先週25日に開いた経営説明会で開口一番こう語った。さらに「この計画を確実に実行するためには、現場と経営陣との距離を短くし、一体となって取り組まなければならない。全社一丸となってこの計画を達成するために、4月1日付で経営陣の若返り、一新を図ることにした」と社長交代を発表した。

 次期社長に指名されたのは、遠藤信博取締役執行役員常務。これに伴って会長に就任する矢野社長は、遠藤氏を後任に選んだ理由についてこう語った。

 「遠藤常務は現在、経営企画を担当しているが、その前は無線通信装置のパソリンクを世界シェアトップに育て上げた経験を持つ。その実績から、今回の中期経営計画の柱であるサービス化、グローバル展開を推進していくのに最適な人材だと判断した」

 そして矢野社長は、「本日の中期経営計画の発表は、経営企画担当としてこれを取りまとめた遠藤常務から説明させていただく」とあいさつを締めくくり、遠藤常務に説明を任せた。もともと予定されていた今回の経営説明会では矢野社長がこれまでと同様、計画の内容を説明することになっていたが、この場で急きょ社長交代を発表し、計画を取りまとめた次期社長に説明を任せるとは、なかなかの演出だ。

 その演出に込めた矢野社長の思惑とは何か。それをひも解くためにも、遠藤次期社長が説明した中期経営計画「V2012」の概要を少し紹介しておこう。V2012の「V」はV字回復やVictoryを踏まえたもので、企業理念に基づいてNECグループが10年後に実現したい企業像をまとめた「NECグループビジョン2017」を達成するための重要なマイルストーンと位置付けられている。

 NECグループビジョン2017では、2017年度の目標として当期利益2000億円、ROE約15%、海外売上高比率約50%を掲げているが、そのステップとなるV2012では2009年度600億円見込みの営業利益を2000億円に、同100億円見込みの当期利益を1000億円に、同1.6%見込みの営業利益率を5.0%に、同1%見込みのROEを10%に、同19%見込みの海外売上高比率を25%に引き上げることを目指している。

会見に臨むNECの矢野薫社長(右)と遠藤信博次期社長 会見に臨むNECの矢野薫社長(右)と遠藤信博次期社長
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