クラウドコンピューティングはIT業界で脚光を浴びている成長分野だ。本格的な成長と普及を目前にした今、再び立ち止まって「クラウド」を考察したい。
「アナリストの視点」では、アナリストの分析を基に、IT市場の動向やトレンドを数字で読み解きます。
クラウドコンピューティングはIT業界で脚光を浴びる成長分野だ。本格的な成長と普及を目前にした今、再び立ち止まってクラウドを考察したい。
矢野経済研究所は、2009年12月にクラウドコンピューティングの市場規模予測を発表した。市場規模は2009年時点で1406億円、2012年には約3倍の4106億円、2015年には5倍以上の7438億円に達すると予測している(図1)。
この調査後、ITベンダーとディスカッションを実施した。ITベンダーからは、クラウド市場の成長性について賛同を得るとともに、「本当のクラウドとは何なのかを定義する必要性を感じている」という意見をいただいた。本当のクラウド――。一見すると不思議な表現だが、現場の感覚をよく言い表した言葉である。
クラウドの定義は、「Webを通じて提供されるさまざまなサービス」という次元まで拡大している。ホスティング、ASP(ソフトウェアの期間貸し)、共同利用型システム、オンラインサービスはこれに当てはまるが、新しい技術やアイデアではない。
クラウドをマーケティング用語として扱い、関連するサービスや製品をクラウドと称してアピールする企業も出てきている。だがそれらの中には、従来型の製品やサービスの看板を「クラウド」と付け替えただけのものもある。関連する製品やサービスを「クラウド」と標榜するのをためらっている企業も多い。
業界内にいるITベンダーでさえ、本当のクラウドに疑問を抱いているのが実態だ。これでは、ユーザー企業が混乱するのも無理はない。
クラウドとは、米Googleや米Amazon、米Salesforce.comなどがもたらした概念である。これらの外資クラウドベンダーは、巨大なクラウド基盤から拡張性の高いサービスを新しい料金体系で提供するという画期的なビジネスモデルを提示し、IT業界の台風の目となった。
では、日本のクラウド市場の実態はどうなのだろうか。
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