「本当のクラウド」とは何かアナリストの視点(2/3 ページ)

» 2010年03月04日 08時00分 公開
[小林明子(矢野経済研究所),ITmedia]

国内ベンダーはGoogleを目指さない

 矢野経済研究所の調査では、クラウドを「アプリケーションサービス」と「クラウドサービス」の2種類に分けた(表1)。

サービスの種類 内容 市場の現状
アプリケーションサービス(SaaS、ASP) アプリケーションを中心にオンラインで提供されるサービス。ASPも含む。 ASP、共同利用型システム等で実績がある。一部のベンダーがSaaSとしてサービスの提供を開始している。
クラウドサービス ITベンダーのデータセンターに設置されたクラウド基盤上で提供されるサービス。PaaSやIaaSのほか、個別企業での利用やクラウド基盤上でのマネジメントサービス、インテグレーションサービスなども含む。 現時点では事業者数、利用者ともに少なく、2010年以降に本格化する見通し。
表1:アプリケーションサービスとクラウドサービスの分類(出典:矢野経済研究所『進化するクラウドコンピューティング市場〜ITビジネスへのインパクトと将来展望〜』)

 クラウド市場の成長を導いたのは外資ベンダーのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)である。そのため、いまだに「クラウド=SaaS」というイメージが先行しがちだ。だが、日本のクラウド市場はプライベートクラウドやクラウドインテグレーションを中心に成長する見通しだ。

 2009年には、富士通、NEC、日立製作所、NTTデータなどがこぞって各社のデータセンターにクラウド基盤を構築したと発表した。各クラウドサービスは、これらの企業を筆頭とするITベンダーのクラウド基盤上で展開される。

 国内ベンダーは、Googleのように巨大な拡張性と破格の価格で世界展開するクラウドベンダーを指向せず、高付加価値型のサービスに注力していくだろう。もちろんデータセンターの拡張性に限界があり、地価も高いという日本特有の事情もある。

 高付加価値型サービスの具体例は、企業のシステム環境を個別対応でクラウド化する「プライベートクラウド」、およびクラウド基盤上での受諾開発や自社システムとクラウドサービスを連携する「クラウドインテグレーション」である。国内のクラウド市場は、アウトソーシングを基点として発展、拡大していくものと位置付けられる。

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