CEOと社員が対話する場――社内ソーシャル化に挑んだBerlitz導入事例(1/2 ページ)

語学サービスのBerlitzは、1月に社内向けソーシャルサイト「SPACE」を立ち上げた。組織内における「縦」と「横」のコミュニケーション環境を統合することが目標だった。

» 2010年05月31日 16時40分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 TwitterやFacebookに代表されるソーシャルサービスがコンシューマー市場で本格的に普及し始め、企業でも組織内コミュニケーションを活性化させる目的でソーシャル機能を導入しようという機運が盛り上がりつつある。日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が開催したイベント「Smarter Collaboration Forum」では、今年1月にLotus Connectionsを利用して社内ソーシャルサイト「SPACE」を立ち上げたBerlitz Internationalが取り組みを紹介した。

 語学サービス大手のBerlitz Internationalは、75の国や地域に567の拠点を構える。本社機能は米国ニュージャージー州プリンストンと東京の2カ所。語学教室の運営に加え、近年はインターネットを利用した「バーチャルレッスン」や留学生支援、企業の幹部候補者向け研修といったサービスを展開する。同社は典型的なグローバル企業であり、多種多様な国籍・文化を持つ社員が在籍している。

久保田氏 Berlitz International バイスプレジデント兼最高技術責任者の久保田大介氏

 バイスプレジデント兼最高技術責任者の久保田大介氏は、「グローバルビジネスをする上で、社内コミュニケーション環境を統合する必要があった。どのような社員がどのような場所で活躍しているのかを全員が把握でき、世界全体で役割を分担していけるよう戦略的にITを用いるようにした」と説明した。

 同社が本格的なIT化に取り組んだのは、2009年3月のこと。まず東京に基幹となるデータセンターを設置。既にあった米国、ドイツのデータセンターと合わせて3地点による冗長化を行った。その後、社員データベース「HR Core DB」、ID管理基盤、IBM WebSphere Portalを利用した企業内ポータルサイトを順次導入した。

 「以前は正確な社員数を把握するのが難しい環境だった。企業内ポータルの導入で組織階層に基づく“縦”のコミュニケーションインフラを実現したが、さらに社員同士が自由に交流できる“横”のコミュニケーションインフラを整備する必要があった」(久保田氏)。その手段として同氏はソーシャル技術に注目し、SPACEの構築に着手したという。

機能 社内ソーシャル化で重視した機能

 SPACE構築のプロジェクト期間は10カ月だった。久保田氏が要件定義で求めたのが「社員データベースとの連携」「自社保有」「多言語対応」の3点。しかし同社のITチームは7人で、運用担当者を除くとプロジェクトに参加できるのは久保田氏を含め5人だった。大規模なシステムを短い期間と少人数で構築するのは不可能に近く、久保田氏は製品選定に際してソーシャル機能が豊富にあり、導入が容易であることを重視した。

 当初はSaaSの利用を検討したものの、拠点のある国によって社員の個人情報保護に関する法規制が大きく異なり、すべての国の法令を順守できない恐れがあったため断念した。自社保有で運用できる製品を複数検討した結果、コミュニティー機能やWiki、ブログ機能などを標準で利用できるLotus Connectionsを選定した。

 実際にプロジェクトが始まると、システムの構築は容易ではなかったという。「自社開発はないだろうと考えていたものの、WebSphere Portalや社員データベースなどとの連携が非常に難しかった。日本IBMの支援もあり、予定通りに運用を始められたことで安心した」(久保田氏)

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