CEOと社員が対話する場――社内ソーシャル化に挑んだBerlitz：導入事例（2/2 ページ）

[國谷武史，ITmedia]

コミュニケーションの活性化と定着化の課題

　SPACEで実装したコミュニケーション機能は、「エグゼクティブメッセージ」「社内ニュースブログ」「地域別業務情報の共有」「社員プロフィールの公開」「コミュニティー」「ベストプラクティスの共有」「インスタントメッセージ」など。

　エグゼクティブメッセージでは、CEOの内永ゆか子氏ら同社の経営陣がブログを通じて全社員に経営方針や日常の出来事に関する情報を発信している。社員からの返信も多く、活発な意見交換がなされているという。従来は、まず拠点の責任者にメールで配信し、レポートラインに従って管理者から社員にメールを転送する仕組みだった。会社の方針を社員に周知するのが難しかった。

　地域別の業務情報を全社で共有する仕組みを用いて、例えば拠点ごとに異なる語学レッスンの授業料リストを公開している。日本で受講している生徒が米国に留学して現地で受講を希望する場合、従来は国内の担当者が現地の担当者に個別にメールで問い合わせるなどしていたが、SPACEを利用すればすぐに情報を把握できるようになった。

社員プロフィールのページ（左）とコミュニティーページ

　社員プロフィールでは、社員の上司・部下といった上下のつながり、同僚やプロジェクトメンバーといった横のつながりも公開している。検索機能を使って必要な相手をすぐに見つけることもできるという。また、社員のプロフィールページには業務時に「つぶやける」機能も搭載。つぶやいた内容は登録している仲間にも自動的に配信され、オンライン上でちょっとした会話ができるようになった。

　久保田氏は、特に「コミュニティー機能がITチームの業務効率化に役立っている」と話す。SPACEのコミュニティー内ではドキュメントの共有が活発に行われているが、誰がどのようなドキュメントをいつ利用したのかといった情報のログも容易に管理できるようになった。

社内ソーシャルを根付かせる施策

　SPACEの運用開始から5カ月が経過し、同社内では久保田氏が目指した「社員間の自由闊達（じゆうかったつ）なコミュニケーション」が形成されつつあるという。社員の積極的なSPACEの利用を支援しているのが、地域単位でIT業務を担当する「サイトマネージャー」と、拠点のWebサイト管理を担当する「コンテンツオーナー」、SPACEの運営管理を担当する「グローバルコミュニケーションリーダー」の3者の連携である。

　久保田氏のITチームは、各地のサイトマネージャーへSPACEの利用に関する研修の機会やガイダンスを提供する。サイトマネージャーはITチームから得たノウハウをコンテンツオーナーに伝達する。コンテンツオーナーは拠点の社員にSPACEを利用を促すという役割分担をしている。またグローバルコミュニケーションリーダーは、社内プロモーションやSPACEの利用状況に関する分析などを担当している。例えば、月単位で新規に参加した社員数や発言数、SPACE上での社員間のリンク数といった指標をまとめて公開し、SPACEが活用されている状況を全社に伝えている。

SPACEを定着化させる施策

　久保田氏によれば、SPACEの構築を検討する以前からCEOの内永氏が社内コミュニケーションの活発化を担う担当者の設置を検討していたという。SPACEの運用に合わせて米国オフィスの社員をグローバルコミュニケーションリーダーに任命した。久保田氏は、担当者が任命当初からSPACEの利用促進に大きく貢献してくれていると話す。

　このほかにも、内永氏は訪問した拠点で社員にSPACEへの参加、社員プロフィールページへの顔写真の掲載を呼び掛けている。久保田氏は、経営トップの積極的な社員への声掛けもSPACEの利用促進につながっていると指摘する。SPACEの導入によって、同社ではメールベースの情報周知方法、拠点や社員ごとにバラバラだった情報共有の仕組みが統一された。異なる拠点の社員同士で活発な意見交換行われるようになった。

　今後のSPACEの利用計画ついて、久保田氏は社員ホームページや「To Do管理」機能の導入、携帯電話への対応、拠点システムとの連携を挙げる。講師や生徒への開放も検討しており、SPACEを社内だけでなく、外部と連携できる企業ソーシャルサイトにしていきたい考えだ。

　久保田氏は、「社員から“SPACEは業務システムと同じくらい大切なシステムだ”という声が聞かれるほど、SPACEは社員にとって不可欠なシステムになりつつあるようだ。社員に貢献するシステムに発展させたい」と述べている。

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