最新調査にみる企業のIT投資動向Weekly Memo(1/2 ページ)

IDC Japanと野村総合研究所が先ごろ、国内企業におけるIT投資動向の調査結果を発表した。そこから見えてくるものとは――。

» 2010年06月21日 08時06分 公開
[松岡功,ITmedia]

2011年には回復基調へ

 政府が6月18日に公表した6月の月例経済報告によると、景気の基調判断は「着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、前月の「着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く」から上方修正した。

 景気の基調判断が上方修正されたのは3カ月ぶり。また「回復」という表現が盛り込まれたのは、リーマン・ショック前の2008年7月以来、1年11カ月ぶりのことだ。ただし、政府は主要な経済指標の回復状況にまだばらつきが見られることから、明確な「景気回復宣言」は見送った。

 企業の業況については「改善している」とし、特に設備投資について前月の「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」と上方修正したが、中小企業では先行きに慎重な見方がまだまだ根強いとしている。

 こうした中で、企業のIT投資の動きは今後どうなっていくのか。IDC Japanと野村総合研究所(NRI)が先頃、相次いで関連する調査結果を発表したので、それらを基に考察してみたい。

 まず、IDC Japanが6月14日に発表した調査結果によると、2010年の国内IT市場規模は前年比マイナス2.4%の11兆2168億円。また2009年〜2014年の年間平均成長率はマイナス0.1%で、2014年のIT市場規模を11兆4256億円と予測。日本経済は徐々に明るい兆しが見えているが、先行き不透明なことから多くの企業でIT投資を抑制する状態がしばらく続くと見ている。

 2010年の各産業分野では、IT投資の抑制傾向が続くため、証券およびその他金融(前年比成長率マイナス6.0%)、組立製造(同マイナス4.6%)、官公庁(同マイナス5.8%)など、大半の産業でマイナス成長になるという。

 一方、2011年の国内IT市場規模については、前年比成長率プラス0.8%の11兆3111億円と予測。2011年は、経済環境の改善に伴って多くの産業分野でプラス成長に回復し、特にこれまで凍結されていたシステム刷新案件が再開されることから、銀行、組立製造、公共などで比較的高い成長率を見込めるとしている。

 また、2011年以降の国内IT市場については、プラス成長に回復するものの、クラウドコンピューティングの利用拡大や海外でのIT投資拡大などの要因により、当面低い成長率にとどまると見ている。

 IDC Japanではこうした調査結果を踏まえ、ITベンダーへのメッセージとして、「ユーザー企業のニーズに合わせてクラウドに関連するソリューション、またはユーザー企業の海外進出を支援する体制の強化を行うだけでなく、クラウド環境下およびグローバルでのIT統制の支援を行うことが重要だ」としている。

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