デジタルコンバージェンスで分かれる明暗――デジタルAV機器市場の方向性アナリストの視点(1/3 ページ)

地上アナログ放送の終了に向けて、ようやくデジタルテレビ普及のめどが立ちつつある。これまでAV機器市場は堅調な推移を見せてきたが、近年ではデジタル化による機能集約やデジタルコンバージェンスの進行が目立ち、製品ごとの明暗が分かれつつある。デジタルAV機器市場の方向性を考察する。

» 2010年08月04日 08時00分 公開
[石川博満(富士キメラ総研),ITmedia]

アナリストの視点」では、アナリストの分析を基に、IT市場の動向やトレンドを数字で読み解きます。


 AV機器市場は、テレビやカメラ、オーディオなどの主要製品でアナログからデジタルへの買い替えが進んでいる。需要が高まっている新興国を中心に市場が拡大する中、既に一定数の普及を見せている先進国では、メーカー間での価格競争が激化している。

 国内市場では地上アナログ放送の終了に向け、ようやくデジタルテレビ普及のめどが立ちつつある。これまではアナログAV機器からのリプレースにより、市場は堅調に拡大してきたが、近年ではデジタル化による機能集約やデジタルコンバージェンス(融合)の進行が目立ち、製品ごとの明暗が分かれつつある。

国内デジタルAV機器市場の概況

 2009年における国内のデジタルAV機器市場は、2011年7月に迫った地上デジタル放送完全移行に向け、デジタルテレビを中心に市場が拡大した。2010年もその傾向が続く見通しだが、リプレース需要の前倒しにより、2011年後半以降は落ち込みが予想されている。

国内デジタルAV機器市場規模推移 図1:国内デジタルAV機器市場規模推移(その他はディスプレイ、カメラ周辺機器、チューナー/セットトップボックスを対象) 出典:富士キメラ総研「デジタルAV機器市場マーケティング調査要覧(2010年版)」

 テレビ以外の製品はデジタルコンバージェンス化が進み、PCや携帯電話を中心にさまざまな機器に機能が集約、搭載された。一部では製品の普及が一巡し、競合製品も増えたため、市場が縮小する製品もみられている。

地上デジタル放送移行が迫り活気付くデジタルテレビ市場

 地上デジタル放送完全移行が2011年7月に迫り、国内のデジタルテレビ市場ではアナログテレビからのリプレースによるデジタルテレビの拡販が目立っている。デジタルテレビはこれまで思うように普及しなかったが、2009年5月の景気対策、地上デジタル放送対応機の普及を目的としたエコポイント制度の導入が功を奏し、2009年は年間1000万台市場といわれている国内テレビ市場を大きく上回った。

国内デジタルテレビ市場規模推移 図2:国内デジタルテレビ市場規模推移(液晶テレビ、PDP-テレビ、CRT-テレビ、有機EL-テレビを対象) 出典:富士キメラ総研「デジタルAV機器市場マーケティング調査要覧(2010年版)」

 エコポイント制度が2010年末まで延長することになったため、2010年は駆け込み需要も含め、さらに市場が拡大する見通しだ。ただし、デジタルからデジタルへのリプレース需要も前倒しになる反動から、2011年後半から2012年には市場規模が減少すると考えられる。

国内デジタルテレビサイズ別市場推移 図3:国内デジタルテレビサイズ別市場推移(液晶テレビ、PDP-テレビを対象) 出典:富士キメラ総研「デジタルAV機器市場マーケティング調査要覧(2010年版)」

 サイズ別に見ると、2009年は30〜39インチがボリュームゾーンであり、全体の約50%を占めた。各社ハイエンドモデルからスタンダードモデルまでのラインアップをそろえた32インチが市場の中心だった。メーカーの生産数量も多く、ほかのサイズよりもコストパフォーマンスが優れる傾向にある。2010年以降は寝室や子供部屋などの2台目のリプレースが進むとみられ、30インチ未満の比率が高まると予想される。

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