プライベートクラウド、4つの要素における“サービス”と“リソースの自動管理”TechNetブロガーの視点

プライベートクラウド上のサービスは、自分たちが当たり前のように自社内で提供してきたITを「サービス」という言葉の意味と照らし合わせながら見直すことで「創り出す」ことができるのである。

» 2011年02月02日 11時10分 公開
[高添修(マイクロソフト),ITmedia]

(このコンテンツはTechNet Blog「高添はここにいます」からの転載です。エントリーはこちら。なお、記事内容はすべて筆者の個人的な見解であり、筆者が勤務する企業の立場、戦略、意見等を代表するものではありません)

 先日、「プライベートクラウドの目的」に続いて、「プライベートクラウド構築のための4つの要素」についても投稿しました。

 あらためて、こちらが4つの要素です。

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 さて今回は、4つの要素のうち、右の2つについて解説します。

 これも一番右側から見ていくと分かりやすいのですが、「提供サービス(リソース)」は社内に提供するサービスそのものですから、アイデア次第でさまざまなものがサービス化できます。

 仮想化に特化したものを並べるだけでも、

  • 仮想サーバ
  • VDIをベースとした仮想デスクトップ
  • App-V等の仕組みを使った仮想アプリケーション
  • リモートデスクトップサービス(旧ターミナルサービス)RemoteAppのリモート実行可能なアプリケーション

 他にもいろいろとあります。

  • メールボックス(メールボックス容量や利用者数による課金)
  • 共有フォルダ(容量クォータで制御)
  • 情報ポータル
  • Webサーバ
  • データベース
  • アプリケーションサーバ
  • チーム開発用のサービス
  • トレーニングリソース
  • 印刷やコピー

 どうでしょう?

 なんでこれがプライベートクラウド? と思う方もいるでしょう。

 しかし、これこそが、仮想化の呪縛からのがれ、社内のために「サービス化を意識する」ということなんです。

 自分たちが当たり前のように自社内で提供してきたITを、サービスという言葉の意味と照らし合わせながら見直していくわけです。

 (プライベートクラウドとは呼んでいませんが、マイクロソフトのプリントアウト環境は、品川への移転によるシステム見直しで随分と利用者にやさしいものになりました)

 ここで重要なのは、

  • 提供しようとしているリソースを、利用者がサービスだと感じられるかどうか?

 もう少し簡単に言うと、

  • お金(社内課金)を払ってでも使いたいと思ってもらえるものかどうか?

です。

 ここが崩れると、利用者は社内のIT部門ではなく外を向くでしょう。

 そしてIT部門は、部門存続の危機から自分たちを守るために、ガバナンスという名の“押さえ付け”で、使い勝手の悪いITを強制的に使わせるしかなくなります。

 利用者も、提供する側も不幸せな状況……もう最悪です。

 やっぱり、両方が幸せになるサービスを提供したいものですよね!?

 なので、ポジティブな話をしましょう!

 IT部門にアイデアマン(もしかしたら通常業務で浮いてしまっている人かもしれません)がいて、サービスとして提供するリソースについての良い案が出てきたとしましょう。

 そこで考えないといけないのは、最初に書いた通り、プライベートクラウドの目的の1つにコスト削減があるということです。

 要は、自動化や標準化を進め、徹底的に運用のコストを下げる努力が必要となります。

 そこの担い手は、プライベートクラウドの4つの要素のうち、右から2番目の「管理基盤(自動処理)」です。

 管理基盤はリソースによって変わるわけですから、この要素は、運用管理機能がついている製品そのものかもしれませんし、仮想化のように管理専用のツールかもしれません。

 最適な運用基盤を選ぶポイントとして、

  • 柔軟に意図したとおりのリソース管理ができること
  • 運用コストを抑えられること
  • 自動化や省力化に貢献すること
  • 安定した運用を実現できること

などが挙げられます。

 運用コストを削減しながらも、利用者が必要だと思った時に迅速かつ確実にリソースを提供しなければならないわけですから、重要です。

 もちろん完璧はありえないので、自動化できないからといって駄目と言い切るわけにもいかないのですが、プライベートクラウド化の目的から反するようなコスト高なサービス提供になる場合は、根本から見直すことをお勧めします。

 さあ、概念的な話はこれくらいにして、具体的にマイクロソフト製品の管理の自動化の話をしておきましょう。

 去年(2010年)の1月、「SharePoint Server 2010」という新しい製品(多機能なので一言では言えませんが、SharePointを情報ポータルとして聞いてください)のインフラ系セッションを担当しました。

 そこで強調したのは、SharePointそのものの機能というよりも、SharePointがいかに管理の自動化を意識した製品になっているか……でした。

 SharePointの新機能を聞きに来た人は「何か違う」と思ったかもしれません。

 しかし、もしそこにプライベートクラウドを推進しようとしている人がいたとしたら、私の言葉に若干なりともヒントをつかめたのではないかと思います。

 なにせ、今まではInternet Explorerを起動して設定をしたり、専用のコマンドツールを駆使して管理をしていたのが、PowerShellでポータルなんかを簡単に作れるようになったのですから。

 PowerShellそのものはスクリプティングのベースでしかありませんが、そこにSharePoint開発者が作った専用のコマンドレットが用意されているので、運用管理者の作業、特に繰り返し実行が必要になるポータルの作成などはどんどん自動化していくことができるわけです。

 例えばこれです。

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 New-SPSiteコマンドですから、新しくSharePointのサイトを作ろうとしているわけですね。

 (PowerShellの特徴の1つなのか、開発者のセンスなのかわかりませんが、PowerShellは視覚的にもわかりやすいものが多いですね……)

 さて、PowerShellに慣れ始めている運用管理者にとって、SharePointがすごく身近に感じられるのではないでしょうか?

 なぜなら、いつもの運用のパターンにSharePointが組み込めるわけですし、自分で管理できる/制御できるというのは運用管理者にとってこれほど安心できるものはありません。

 さらに、ここまでくればトリガーは何でもいい。

 メールでも社内文書でも、きっかけがあれば上記のスクリプトの変数だけを修正して実行するだけなのですから。

 ちなみに、PowerShellによる管理基盤を最初に導入したのはExchangeです。Exchangeの開発チームはActive Directory統合といい、ほんとに新し物好きというか、先進性があるというか、最初ということで開発の苦労はあるでしょうが、充実した仕事なのではないかなと想像してしまいます。

 他にも、複数Hyper-Vの集中管理を行うSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM)は完全にPowerShellベースですから仮想マシンはスクリプトで簡単に作れます。

 Citrixさんと一緒にやっているVDIの中で、Citrixさんの管理ツールがHyper-V上に仮想デスクトップを作る際、PowerShellを使ってSCVMMとの連携をしています。

 いろんなリソース、いろんな管理ツールが出てくるITにおいて、複数のツールがPowerShellという同じテクノロジーで標準化され、ツールの違いをPowerShellが吸収してくれるわけですね。

 話をプライベートクラウドに戻しましょう。

 さて、ここまでを簡単にまとめると、

 “良いサービス” を “徹底したコスト削減努力” によって “低価格” で ”安定的に提供する”

ために、どんなテクノロジーを選択するか……。

 プライベートクラウド構築に向け、しっかりと考えていただければと思います。

 さて、次回は、正しいテクノロジーの選択によって自動管理ができるようになったITリソースを、プライベートクラウドとしてどのように提供するか? そのために必要になるUIやワークフローについて見ていくことにしましょう。

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