経営資源の少ない中堅・中小企業において、コストを抑制できるICTサービスが注目されている。しかしながら、活用する上での課題も少なくない。
【第1回】経営戦略とIT
ハードの低価格化とネットワーク環境の充実により、中堅・中小企業でも情報システムの導入が可能となった。それと歩調を合わせるようにサービスとしてのICT利用が進展している。
ICTをサービスとして活用することによって、企業は初期投資やランニングコストを削減し、投資対効果を向上させることが可能となった。とりわけ経営資源の少ない中堅・中小企業においてはその期待は大きいだろう。ただ、単にサービスを利用すれば、期待するような効果が得られるということではない。「どのサービスを」「どの範囲に」活用するかを明確にし、最適なICTサービスを慎重に検討する必要がある。
今回は、その活用方法についての大まかな整理と、中堅・中小企業におけるICTサービスの可能性、特に情報処理・分析系システムにおけるサービス適用の可能性について述べたい。
ICTサービス活用の可能性を検討するにあたって、情報を整理しておく。一般的にサービスとして提供されるICTは、その提供形態として以下の4つに分類される。
例えば、企業で利用するICTの変更度が高ければHaaS、小さければSaaSが採用される傾向にある。
次にITシステムを4つの分野に分類する。
この整理に沿って、現状の活用実態を概観し、その可能性を考える。
特殊な使い方をしている企業は少なく、早くからサービス利用が進んでいたこともあり、SaaSで利用する企業が増えている。一定の範囲まで無料で使えたり、有料でも非常に安価なサービスがそろっており、ユーザー企業は投資に見合った効果を得られているようだ。
コミュニケーション系に次いでICTサービスが進んでいる分野である。この分野では特にECや消費者向けサービスを提供している企業がPaaSやHaaSで使うケースが多いが、若干注意が必要である。
この分野で効果が最も得られるのは、ECサイトでの特定商品や新サービスのリリース直後に通常の数十倍のアクセスが一時的に発生するなど、アクセス数の増加が極端かつ予測ができないような場合である。この場合は使用量に応じて料金を支払うというICTサービスのメリットを享受できる。ただアクセス数の増減が数倍程度しかしないようであれば、サービスとして利用するよりもハードを所有して、ホスティングを利用、運用するほうがコストを低く抑えられるかもしれない。
この分野ではICTサービスの利用はほとんど進んでいない。基幹業務システムは処理件数の増減が一定の範囲に収まるため、使用量に応じてコストを支払うというサービス利用のメリットが得られない。
企業規模の大小を問わず、多くの企業が自社開発もしくはパッケージのカスタマイズによるシステム構築を行っている。運用・保守管理や追加機能開発を考えると、独自環境を保有したほうが柔軟性の高い場合が多い。
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