3つのクラウドを“つなぐ”Citrixの製品戦略、CEOが来日会見

企業ITのコンシューマー化、クラウド化によって社員のワークスタイルやIT部門の役割が変わる――米CitrixのテンプルトンCEOは、このビジョンに基づいた製品戦略を披露した。

» 2011年07月07日 18時13分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは7月7日、都内で記者懇親会を開き、米Citrix Systems社長兼CEOのマーク・テンプルトン氏が経営方針や製品戦略などを紹介した。「パーソナル」「プライベート」「パブリック」の3つのクラウドコンピューティング環境を“つなぐ”部分において、同社の存在感をさらに高めていくという。

マーク・テンプルトン社長兼CEO

 テンプルトン氏は冒頭、「いつでも、どこでも柔軟に働ける環境の実現が当社の創業以来のビジョンだ」と語り、同社の仮想化基盤やネットワーク製品・サービスが、ワークスタイルの多様化や事業継続体制の強化などを望む企業ITのニーズにマッチすると強調した。

 これらを後押ししているのが、「ITのコンシューマー化」やクラウドであるという。「ITのコンシューマー化」では、個人がPCに加えてスマートフォンやタブレット端末も利用するようになり、マルチデバイス環境でコンピューティングリソースを利用するというスタイルが広がりつつある。テンプルトン氏は、これを「パーソナルクラウド」と呼んだ。

 一方、企業や組織では自前のITリソースを集約・共有するプライベートクラウドや、外部のITリソースを活用するパブリッククラウドが普及しつつある。テンプルトン氏は、今後「パーソナル」「プライベート」「パブリック」の3つのクラウドの相互利用が広がり、企業ITの在り方が変革するとの見方を示す。5月に米国で開催したユーザーカンファレンスでは、3つのクラウド環境を“つなぐ”Citrix ReceiverやNetScalerの新製品を発表した。

 Citrix Receiverは、サーバ上に集約されているユーザーの仮想デスクトップ環境や仮想アプリケーションを手元のデバイスで利用するためにツール。PCやモバイルの広範なOSのサポートを進めており、既に10億台以上の機器で利用できるという。最新版ではマルチメディアデータをユーザーに配信する「HDX」技術を強化し、パフォーマンスを3倍に高め、QoSも実現したという。これにより、クラウド環境から提供されるサービスをユーザーはよりスムーズに利用できるようになるとしている。またInternet Explorer、Firefox、Safari、Google Chromeへの対応も図った。

 NetScalerでは、パーソナルとプライベートを“つなぐ”役割を果たすという「NetScaler Cloud Gateway」を発表した。同製品はクラウド内のさまざまなサービスを集約して、Citrix Receiverとの円滑な情報伝達を可能にするという。例えば、シングルサインオンによる複数アプリケーションの利用が可能になるほか、ライセンスやサービスレベルの一元管理ができるようになる。

 また、プライベートとパブリックを“つなぐ”部分には「NetScaler Cloud Bridge」を展開する。オンプレミスのデータセンターと外部サービスの安全かつ円滑な接続を実現するといい、通信の暗号化やトラフィックおよびパフォーマンスの最適化、遅延の低減といった機能を持つ。

 このほかにも、テンプルトン氏は中小企業向けに低コストで仮想デスクトップ環境を導入・運用できるようにするアプライアンスや、オープンソースのOpenStackをベースにしたIaaS「Project Olympus」の取り組みなども紹介した。

 テンプルトン氏は、従来の企業ITはコンピュータが主役だったが、クラウド時代は人間が主役になるという。「この点でIT部門の役割をみていくと、これまでは“工場長”のようなものであり、最適化・コスト削減が主題だった。クラウド時代は“小売業”であり、ユーザーに価値を提供し、それを高めることが主題になる」(同氏)

 CO2の排出削減で自社の社会的役割を高めたいという経営者に対し、IT部門はクラウドなどで環境負荷が小さいITサービスを実現する。その取り組みがIT部門の新たな評価になると、同氏は一例を挙げた。最終的にこうした価値をユーザー企業に提供することが、同社のゴールだとしている。

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