「ゼロカロリー飲料」の不思議萩原栄幸が斬る! IT時事刻々(1/2 ページ)

猛暑が続く今日この頃。こんな時はジュースでも飲みたいものだが、体重が気になる人が選びがちなのが「ゼロカロリー」だ。商品に表示された「ゼロ」は本当だろうか――それを検証してみたい。

» 2011年08月13日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

本コラムは、情報セキュリティの専門家・萩原栄幸氏がITとビジネスの世界で見落とされがちな、“目からウロコ”のポイントに鋭く切り込みます。


 筆者がまだ某金融機関に務めていた15年以上も昔のことである。当時所属していたグループの朝礼では、どのような話題でもいいから2〜3分間ほどの内容をグループにお披露目をするという習慣があった。グループには100人を超える社員がいたので、半年に1回ほどの間隔で順番が回ってきた。今ではもう廃止されたが、当時はそれが嫌でたまらなかったものだった。ある時、筆者は仕方なく自分の興味があった「ダイエット飲料」について話をしようとして、いろいろ調べて資料を作成し、当日の朝礼で配布した。今回はその時の内容に最近の情報を少し加えて紹介したい。

 砂糖――筆者にとっては「悪魔」のように聞こえる。ちょっと太り過ぎと言いたいが、正直なところ「めちゃ、太り過ぎ」の筆者にとっては、「ダイエット」や「低カロリー」という言葉は本当に何でも試したがる要素を含んでいる「希望の光」と同じである。そこで15年以上も前に実は真剣にダイエットに挑戦し、4カ月で18キロもの減量に成功した(それでも半年でリバウンドしてしまった……)。その時の補助手段として、ジュースやコーラを「ダイエット飲料」に転換したのが結構効いたと思っている。だが筆者の性格上、それが「良い」と一方的に考えることは絶対になく(セキュリティの根本的な考えとも類似している)、「悪い面」を探したのである。

 当時、「アスパルテーム」という名前も使用していたが、別名も幾つかあった。正式な名称がアスパルテームである。「パルスイート」などはそれを成分の1つとした商品名である。

 この物質が甘味の基だ。当時、筆者が理解していたのは「この成分のカロリーはほとんど砂糖と同じ、ただ甘さが200倍程度あり、使用量が理屈では200分の1で済むのでカロリーが低いと錯覚されている物質」ということであった。また、その副作用として筆者が知っていたのは、フェニルケトン尿症の子供が摂取すると脳障害になる可能性が高いということである。資料を配布した朝礼の時に、「この名前の病気ってどういうものか?」と聞かれた記憶があるので覚えていた。

 現在でもFDAがその疑いがあるということが資料に掲載されているので、そういう可能性のある方(両親が認識している必要がある)は避けた方が賢明だろう。また、ネット検索では「発がん性」などの指摘を多々見つけることができたが、1時間ほど探しても、その根拠となる医学論文が見つからなかった。ネットは重要な情報源ではあるが、きちんと出典を調べないと、とんでもない間違いを犯し兼ねないので十分な注意が必要である。

 推定致死量は200グラム程度であり、現状のゼロカロリー飲料やゼロカロリーゼリーなどの嗜好品はせいぜい数十ミリグラム(最大でも100ミリグラムのオーダーでしか論理上はあり得ない)の添加であることを考えるなら、この線での危険性は通常の食品と同程度だろう。しかし、だからといって安全かと言われると、人工甘味料である以上は予想外のリスクの可能性は残されている。そう指摘しながら筆者はゼロカロリー飲料のお世話になっているのだが……。

ここが変!だよ ゼロカロリー飲料

 以前から友人には話しているのだが、まず「ゼロカロリー」の表示がおかしい。法律では100ミリリットル当たり5キロカロリー(kcal)未満なら、「ゼロカロリー」や「ノンカロリー」などの表記をしてもいいとされているらしい。つまり、「いくら飲んでもカロリーはゼロ」という認識ではなく、正確には「ペットボトル1本で25Kcal未満の摂取で済む」と考えなくてはいけないのである。

 この表記について、ラベルにはその他の成分も含め一覧で表示しているのだが、ここではせめて正直に記載してほしいものだ。そこに「0Kcal」と堂々と表記をしているのはいかがなものか。「表記」と「成分表」を混同してしまいかねず、いかにも「本当にゼロ(0)」だと思ってしまう。何とも腑に落ちないのだ。

例えばある飲料のラベルには次のようにある(実在のものを混在させているので特定商品ではない)。

栄養成分表示(100ミリリットル当たり)

  • エネルギー……0cal
  • たんぱく質……0グラム
  • 脂質……0グラム
  • 炭水化物……0.8グラム
  • ナトリウム……37ミリグラム
  • 糖質……0グラム

 だいたいミリグラムとグラムでは1000倍の差があるのに、それを並べて表示するのは、専門家なら構わないが、一般向けの表示方法としては不適切に感じるのだ。

 糖質はアスパルテームなどが主体の場合、グラム表記ならゼログラムになってしまう(一部メーカーを除く)。その割にどのメーカーでもほとんどのナトリウム表記はミリグラムである。「ちょっと待ってくれ!」と言いたい。一般の人は、「ナトリウム」と聞けば「食塩」を認識している。

 しかし食塩とナトリウムとは別物である。親切な一部のメーカーは、この表記以外に「食塩相当量」をグラムで表記している。それでもラベルには、「ナトリウム16ミリグラム、食塩相当量0.0グラムと記載されている。この表記をつけた意味は何なのだろうか。せっかくここまで親切に表記したのなら、ここはミリグラムに統一して記載すべきだろう。残念でならない。ナトリウムから食塩の量は次のように算定する。食塩が「塩化ナトリウム」であることは中学生なら知っているだろう。つまり、塩素原子(35.5)とナトリウム原子(23)が1対1で結合したものだ。よって、ナトリウムが全て塩素と結合しているという仮定では、ナトリウム16ミリグラムであれば食塩相当量は「16×(23+35.5)/23=40.7(ミリグラム)=0.0407(グラム)」である。「0.0」の表記なら0.0グラムとなるので論理上は「正しい」。しかし、表記としては「おかしい」。

 さらに疑問に思うのは、この法律からするなら何と果汁10%でも(果汁は未調整そのままで使用する。とはいっても濃縮還元果汁だが)、「ゼロカロリー飲料」となってしまう。そういう商品が出てもおかしくないと思っていた矢先、何とそれがコンビニに置いてあった。特定企業を非難する気持ちは全くないが、そのメーカーの商品には、大きく「果汁10% 0Kcal」と表記されていた。

栄養成分表示(100ミリリットル当たり)

  • エネルギー……0Kcal
  • たんぱく質……0グラム
  • 脂質……0グラム
  • 炭水化物……0.7〜1.2グラム
  • ナトリウム……7〜17ミリグラム
  • カリウム……17〜27ミリグラム
  • カルシウム……1〜8ミリグラム
  • クエン酸……885ミリグラム(1本当たり)

 名称には「10%混合果汁入り飲料」とある。混合果汁はこの場合、グレープフルーツとレモンだ。表記に「果汁10%未満」となっている飲料もあるが、これは5%以上10%未満のことであるという点は豆知識として知っておいていただきたい。これも表記で大きく0kcalということは正しい(あくまで法律上)。しかし、せめて栄養成分表示は「ゼロ」ではいけないというのが常識だろう。

 文部科学省の食品成分データベースによれば、グレープフルーツ(濃縮還元ジュース)は100グラムで35Kcal、レモンは濃縮還元がなく「果汁・生」しかないのでこれを採用すると、100グラムで26kcalだ。5対5の混合とするなら、100グラムで果汁だけみても平均で30.5kcalのエネルギーがある。つまり10%の混合なので飲料としてみるなら、100グラムで3.05kcalとなる。よって、せめて栄養成分表示は果汁以外のエネルギー源も含ませて、例えば「エネルギー3.1kcal」という表記が望ましいのではないか。

 また、この甘味料には広く採用されているアスパルテームの代わりに「アセスルファムK+スクラロース」の表示がある。これらについても簡単に説明したい。今では後発のこの2種の甘味料の合計で、売上はアスパルテームを大きく上回っているのだ。

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