「ゼロカロリー飲料」の不思議萩原栄幸が斬る! IT時事刻々(2/2 ページ)

» 2011年08月13日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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後発の甘味料の謎

 アセスルファムKは、正しくは「アセスルファムカリウム」という。筆者が15年ほど前の朝礼で紹介した時期には認可されていなかった添加物だ。アスパルテームと同様に砂糖の200倍程度の甘さがあり、両方用いるとさらに甘さが出てくるとの報告がある。熱に強く安定した物質なので、近年はこちらを使う食品が多い。

 アセスルファムカリウムについては、厚生労働省行政情報に詳細な情報がある。これを見る限りでは、アスパルテームより安全でほとんど副作用も報告されていない。ただ過信は禁物だ。ほどほどの利用をお奨めしたい。

 スクラロースは、何と甘さが砂糖の600倍もある。しかも抜群の安定性を誇り、体内で分解されたり、代謝されたりすることがない。副作用も有効な報告はない。ただしWikipediaによれば、熱安定性が高いが、100グラム中に26.7グラムの塩素を含む有機塩素化合物なので、オーブンなどで138度以上に加熱すると塩素系ガスが発生するとの記載がある。ただし、これについては「出典無効」との注意がある。出典は「第156回国会 参議院厚生労働委員会(2003年5月22日)」だ。

 そこで国会会議録検索システムを使い、該当箇所を探してみると確かに存在した。14〜16ページがそれに該当する部分で、井上美代議員の質問と政府参考人として回答したされた遠藤明氏(厚生労働省医薬局食品保健部長)の内容である。

質問

 「今、人工甘味料としてステビアが広く使われているようです。これが人間の生殖機能に支障を与えるおそれがあるということで、人工甘味料がスクラロースに転換をされつつあるところです。このスクラロースについて内部からの重大な告発がありましたので、それについて質問をさせていただきます。

 イギリスのテイト・アンド・ライル社というのがこれの開発をいたしております。一九九九年に食品添加物として厚生労働省は指定をされました。人工甘味料スクラロースについてですけれども、最近、私もスーパーやコンビニなどにも行って見ておりますけれども、かなり見掛けるようになってきているんです。

 このスクラロースは、百グラム中に二十六・七グラムもの塩素を含むという驚くほどの塩素量の多い有機塩素系の化合物です。これだけ塩素が多く含まれている食品添加物はまずありません。塩素を多く含むということは、加熱したとき一体どうなるのかというその心配が一番あります。

 実は、私どものところにこの人工甘味料スクラロースの安全性に関する告発が届きました。そこでは、スクラロースを百三十八度以上の高温で加熱をすると塩素系ガスが発生する、このように指摘しているわけですけれども、厚生労働省はそのようなことがあるとお考えでしょうか。それとも、絶対ないということでしょうか、御答弁を願います。」


回答

 「政府参考人(遠藤明君) スクラロースの高温における安定性についてでございますけれども、添加物指定の際の提出データにおいて、粉末及びクッキー等の食品中での安定性につき試験をした結果、クッキーを二百十度で八分焼いた場合においても塩素を含むものを含め分解物が検出されないというふうな報告がございます。

 私どもといたしましては、スクラロースの高温時の安全性に問題があるとは考えておりません。」


質問

 「井上美代君 しかしながら、その告発のところではそのような塩素ガスが発生するということが言われているわけなんです。

 厚生労働省が安全性を審査したときの資料というのは、高温で、摂氏九十度、摂氏百度、百十度で保存されたスクラロースからガスが放出されたと。ガス状のものが放出物として出てきたということが言われております。それは酸性のガスだと記録されているということですけれども、摂氏百十度では三分を超えてガスが出るということを言っておられる。そういうデータでやっていらっしゃる。告発者の方は、塩素ガスが出ると、こういうふうに言っているんですね。

 厚生労働省はメーカーが作ったデータで加熱をしても安全と判断しているようですが、内部告発では百三十度で分解をして、焦げて、そして同時に何らかの有毒ガスが発生して、そしてその場にいた人が鼻の粘膜をもう著しく損傷している、そういうものが発生しているわけなんです。その場にいた人がそういうふうになっているんですけれども。」


回答

 「厚生労働省といたしましては、スクラロースを含め添加物の安全性に関する新しい情報の収集に努めますとともに、必要に応じてこれまでの評価を見直すなど、国民の健康確保に支障がないよう適正に対処してまいるつもりでございます。」


 この発言後のやりとりの中では次のようにある。

 「政府参考人(遠藤明君) 私どもの承知している範囲では、スクラロースの原体を高温にした場合にそこから塩化水素ガスが出るというふうなデータがあるというふうなことは承知をしております。しかし、クッキーにおいての実験においては問題がないというふうなことで先ほど申し上げたような判断をしているところでございます。」


 これでも出典無効なのかどうにも分からない。もし有識者がいれば、ぜひ教えていただきたいと思う。ひょっとすると、井上議員がデマ情報に惑わされたので無効なのだろうか。とにかく、あまりの種類の多さにびっくりするほどのものがこの添加物に使われており、筆者毎日口にしていることは疑いようのない事実だ。本当はどうなのだろうか。

 最後にこの「栄養成分表示一覧」については、やはり正確な数字を記載すべきであると感じている。ラベルに「ゼロ」と記載が許されるからといって、実際の成分と異なる表記はまずかろう。決して「ゼロ」表示を非難するつもりはない。これでインパクトを出せて、売上に貢献し、そして法律上でも許されているなら百歩譲って良しとしてもいい。でも成分表示をそれに合わせるのは、本末転倒だ。

 例えばコカコーラの場合、「ゼロ」とは小さく記され、その表記の横に「sugar」とある。法律で栄養表示もゼロと決まっているかは専門家ではないので分からないが、果汁10%と表記をしながら成分表示をゼロと記載するのは、いかがなものだろうか。カロリーのない果汁は存在しないはずである。

 さらに調べていくと、適切に表示しているメーカーもあった。その商品にはラベルに大きく「ノンカロリー」と表示され、小さな文字で「栄養表示基準に基づきエネルギー5kcal(100ミリリットル当たり)未満をノンカロリーとしています。」と記載している。栄養表示では「エネルギー1kcal」、別の種類には「2kcal」と表記されている。このような表示の仕方は「素人的」かつ「常識的」ではないだろうか。読者が愛飲している飲料にはどう表記されているか、お盆の時にでもちょっと見てみるのもよいだろう。

 ちなみに15年ほど前の筆者の朝礼で配布した資料を今でもお持ちの方がいれば、食事にお誘いしたいので、ぜひ連絡していただきたい。当時の資料にはアスパルテームの構造化学式なども書いているが、自己中心的ですまなかったと反省している。こういうものに興味のある人なんて当時はいるわけもなかったのだから……。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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