IaaSの選び方 ハイブリッドで活用する方法適材適所のクラウド選び(1/2 ページ)

クラウドサービスでこの1年に急速に広がったIaaS(Infrastructure as a service)。その提供にはさまざまな形態があり、目的に合わせた活用がポイントになる。

» 2011年09月08日 08時00分 公開
[近藤孝至, 水谷安孝,KVH]

 既に「クラウド」はさまざまな場所で利用されています。その中でもサーバなどインフラ部分を提供するIaaS(Infrastructure as a service)は、これまで自社購入・構築にこだわってきた企業にも浸透しつつあります。業界の規制などから導入に慎重だった金融機関においても、システムの一部に活用され始めているのは注目に値するところです。しかしながら、企業の全ての要求にクラウドが応えられるわけではありません。どのように選び活用していくのか、そのポイントをご紹介します。

プロバイダーの特徴

 クラウドは、提供する機能の位置付け(レイヤ)によって、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaSとに分類されます。どのレイヤのサービスにおいても提供するプロバイダーは多岐にわたり、特にIaaSでは、さまざまなバックグランドをもったプロバイダーがひしめいています。この中から自社に最適なサービスを選ぶのはなかなか困難です。しかし、これらIaaSのプロバイダーをそのバックグランドや所属する業界によって分類してみると、そのサービスの特徴を同様に分類できます。まずはどのようなプロバイダーがあり、どのようなサービスを提供しているのか、その特徴を俯瞰してみましょう。

プロバイダーのバックグランド別にみたIaaSの特徴

 まず読者がクラウドと聞いて思い浮かべるのは、「クラウド専業」のプロバイダーでしょう。負荷に応じて自動的にサーバを追加してくれる「オートスケール」機能や、使った時間分だけの料金を支払う時間制課金などを提供しています。クラウド専業のプロバイダーは、世界中のユーザーが利用している自社のアプリケーションサービスのために構築したプラットフォームを利用してIaaSを提供しているため、これらの機能が充実し、グローバル展開されているのが特徴です。このため、インターネット以外のネットワーク(法人向けのイーサネット接続サービスなど)に接続するといった、個別のカスタマイズなどにはなかなか応じてくれません。また、データが海外の設備に保存される可能性があり、業種によっては規制によって利用できないこともあります。

 「ハードウェアベンダー」や「システムインテグレータ」は、個別のシステム構築というビジネスからスタートしているため、システム全体のマイグレーションなどには圧倒的に強いといえます。アプリケーションの動作確認まで含めて、1社に任せたい場合には最強の選択肢です。そのような場合には個別構築の色合いが強くなり、経営層が期待する「クラウドによるコスト削減」が困難になるケースがあります。ネットワークに関しては、ネットワークインテグレーションのチームが存在するかどうかでその体制が大きく異なります。

 「通信キャリア」は、データセンターのビジネスの延長としてIaaSに取り組んでいるケースが多く、「ホスティング」の資産や経験をクラウドに展開していると言えます。ネットワークとの“合わせ技”についての提案力は他の業種を大きく引き離します。「クラウドだけで完結しない」場合には、非常に有効な選択肢となるでしょう。ただし、通信キャリアの場合は、どうしてもアプリケーションレイヤに弱いところがあり、システム全体を任せるというところまではいきません。ユーザーには“インフラを買う”という割り切りが必要です。

クラウドは万能ではない

 どのプロバイダーのサービスを利用するにせよ、システム全てをクラウドに移行できるとは限りません。ある部分についてはクラウドに移行することでメリットが出るが、他の部分についてはあまりメリットが出ない、ということがあります。クラウドサービスは、大多数の顧客に受け入れられる仕様に固めて、規模を大きくすることでコストメリットを出していますから、以下のような「こだわり」や「ゆずれない」部分については、クラウドでは対応できないケースが多いのです。

業界規制や通例によるシステム間接続の仕様(業界指定の接続機器など)

同業他社と差別化するために改良したシステム(超高速I/Oなど)

帳票印刷や機械制御など、物理動作を伴うシステム(FAサポートシステムなど)

会員制の情報サイトおよび個別IPS設置の例

 例えば、会員制の情報サイトで、Webサーバは台数の季節変動が激しくクラウドに適しているが、会員情報のデータベースは他サイトと共通であり、大型サーバ上で安定稼働している――このような場合にはわざわざ会員情報データベースをクラウドに移す理由はありません。

 また、セキュリティ要件が厳しく、基本は専用線で接続する。インターネットアクセスも限定した上に指定のIPS(不正侵入防御)設置が必要――個別のIPSの設置となると、この時点でクラウド化を諦めてしまうかもしれません。しかしながら、台数が多くしかも季節変動があるなど、サーバに求められる要件がクラウドに合致している場合、それだけでクラウド化を諦めてしまうのはもったいない話です。

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