HPが推進するデータベース改革の行方Weekly Memo

日本HPが先週、4月に発足した「データベース改革推進アライアンス」におけるパートナー拡大を発表した。そこから見えてきたものは――。

» 2011年10月11日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

有力システムインテグレーターが参画

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が10月4日、4月に発足した「データベース改革推進アライアンス」の新規パートナーとして、国内大手システムインテグレーター6社が加わったと発表した。

 データベース改革推進アライアンスは、データベース製品ベンダー5社と日本HPが共同で立ち上げたもので、データベースの標準化によってシステムの移行容易性を確保しようというのが目的だ。今回、6社が新たに加わって合計12社が名を連ねる形となった。

 日本HPの吉谷清 常務執行役員エンタープライズアライアンス営業統括本部長は発表会見で、「企業のシステムは今後、クラウド化へのニーズが一層高まっていくが、一方で従来型システムは一体化したシステムとして構築されており、とくにデータベースがベンダーロックインされてしまっているケースが多い。これをロックリリース(ベンダーロックインからの解放)することで、導入や変更が容易なクラウドのメリットを幅広くお届けできるようにしたい」と強調した。

 さらに吉谷氏はこう続けた。「ただ、データベースをロックリリースするためには、データベースと密接に組み合わせられている業務アプリケーションの改修も必要になる。そこで今回、そうした部分で豊富なノウハウを持つ日本を代表するシステムインテグレーターに参画していただくことになった」

 同アライアンスに新たに加わったのは、日立ソリューションズ、伊藤忠テクノソリューションズ、日本ユニシス、NTTデータ、TIS、東芝ソリューションの6社。有力なシステムインテグレーター各社が加わったことで、同アライアンスでは、技術・マーケティング情報の共有、データベース標準化の推進、セミナーの共同開催といった活動を一層、積極的に展開していく構えだ。

 同アライアンスをめぐるこれまでの動きについては、「Oracleへの反撃に向けたHPの秘策」と題し、2011年1月11日掲載およびその続編を同5月2日掲載の本コラムで取り上げてきたので、発足の背景や目的、日本HPが提供するサービスの詳細については、関連記事を参照いただきたい。

日本HPが推進する「データベース改革推進アライアンス」に新規パートナー6社が加わった 日本HPが推進する「データベース改革推進アライアンス」に新規パートナー6社が加わった

注目される米HPのデータベース戦略

 ただ、これまでの本コラムのタイトルを、なぜ「Oracleへの反撃に向けたHPの秘策」としてきたかについては、あらためて説明しておこう。そこから、今回のテーマであるHPが推進するデータベース改革の行方を探ってみたい。

 事の発端は、日本HPが今年初頭に開いたエンタープライズ製品事業戦略を説明する記者会見で、「データベース市場は一部のベンダーが独占的なシェアを握り続けており、サーバ市場のように顧客メリットとなる競争原理が働いていない。HPはデータベース市場で競争原理を働かせるべく、これから積極的に打って出る」と宣言したことから始まった。

 これはすなわち、データベース市場で独占的なシェアを握り続けてきたOracleに、HPが真っ向から対抗することを意味する。しかもその背景には、HPの主戦場であるサーバ市場に、OracleがSun Microsystemsを買収して参入してきた動きがある。したがって、HPとしては「反撃」に出た格好となる。

 そこで1月11日掲載の本コラムでは、業界関係筋の見方をもとに、「HPが将来をにらんで目論んでいるとみられるのは、データベースとして実績のあるSybaseを手に入れること。となると、昨年7月にSybaseを買収したSAPとどう組むかが焦点となる。場合によっては合併も視野に入れているのではないか」と書いた。

 そして、日本HPがその具体的な戦略として4月に打ち出したのが、データベース改革推進アライアンスである。合併などといったダイナミックな動きは現時点でないものの、同アライアンスにはデータベース製品ベンダーとしてSAPジャパンもサイベースも参画している。

 同アライアンスの発足を受けて書いた5月2日掲載の本コラムでは、気になる点として、この戦略がグローバルなHPとしてではなく、日本HP独自の展開であることを挙げた。厳密に言えば、データベース改革への方向性はグローバルなHPとしての方針に基づいているが、具体的な取り組みは各国・地域に委ねられているので、日本HPとして独自の展開に踏み切った格好だ。

 同アライアンスへの日本HPの意気込みは相当なものだが、こうした取り組みがグローバルなHPへ広がっていくと、さらに大きなインパクトになるはずだ。この点について会見で問うてみたところ、こんな答えが返ってきた。

「今回のアライアンスのような取り組みについては、まず発案した日本HPとして実績を上げたうえでグローバルに広げていけるように努めていきたい。米国本社では、データベースを今後どうHPのビジネスのシナリオに取り込んでいくか、あらゆる取り組み方を踏まえて検討している」(吉谷氏)

 これを聞いたベテラン記者が、筆者の耳元でこうつぶやいた。「やっぱり米HPは、Oracleに対抗できる強力なデータベースを自社製品として取り揃えたいのではないか」

 折しも、米HPは先頃CEOが交代したばかり。一部メディアでは、Oracleから一方的に買収を提案されるところまで株価が下落するのを防ぐことが、交代理由の1つだったとも報じている。メグ・ホイットマン新CEOがデータベース改革に向けてどのような戦略を打ち出すか。日本HPの活動とともに、注目しておきたい。

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