統計で見るコンプライアンス違反でのペナルティ実態えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る(2/3 ページ)

» 2012年02月17日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

セクハラ、パワハラ――自分の感性と他人の感性の大きな違い

 コンプライアンスに関する話題で必ず出てくるのが、「セクハラ(セクシャルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」の問題である。この問題は難しい。なぜなら、よほど注意しても相手が嫌悪感を抱いてしまったら、原則的には“アウト”だからだ。

当人とその相手との感性に共通項が多ければ、お互いにどのように考えているかを予想できるのだが、例えば、若い女子社員と50代の男性部長のような場合、実は男性が考えている以上にその感性の差は大きい。

諸外国では異性同士が2人で話す場合、例えば、部長の個室でならドアを開ける、大学の教授室でもドアを開ける、こういうことが当たり前の行為となっている。そうしないと、「自己防衛」ができないからだ。ここでいう自己防衛とは、「女性」に対する自己防衛という意味だけを想定していては甘すぎる。

 「男性」に対する自己防衛という意味も持っているのである。なぜなら、こうした社会現象を逆手に取り、してもいない行為をでっち上げて内部通報制度を利用して告発するというケースが諸外国でも日本でも発生しているからである。例えば、もし密室で女性が上司の対応に腹が立ち、「何とか復讐したい」と考えたら、ことは簡単である。その場でブラウスを破り、大声で「部長! 止めてください!」といって泣きわめけば……そう、彼女の勝ちである。

 その部長は懲戒解雇され、しかも、女性は多額の「お金」を手に入れられる。ごく一部の卑劣な、しかも、暴力的な男性を罰するために作られた法律が善良な男性にとっては「凶器」となるわけだ。これは最近の「痴漢冤罪事件」に共通する部分も多い。あなたの身は(女性はむろん男性も)、あなた自身で守るしかない。

 筆者が新人のころ、先輩が新人女性のお尻を触ったり、歓迎会の宴席の場でお酌を強要したりしていたことが「当たり前」となっていたが、今では許されない。しかし、一部の中高年はこれを全く理解できていないのだから、実に困る。

 筆者が経験した出来事に次のケースがある。今の人には理解できないことかもしれないが、創作ではなく事実である。

 30年ほど前のこと、筆者の直属の上司が宴会の場でお酒をちょっと飲みすぎてしまい、近くにいた女子社員の胸を両手で鷲づかみした。そして「おっ! ○○さんの胸は昨年より大きくなったじゃないか」と話した。女性は本当に嫌な顔して泣きそうであったが、上司なので文句を言わなかった。

 15年ほど前の出来事だが、このケースでは女性が男性に反撃した。役付き男性職員がグループの女性たち(確か10人ほど)に毎朝、始業時間よりも早く出社させて「全員の机をふけ」と命じたらしい。それ以前に数人の女性が率先して作業をしていたが、男性は「一部の女性だけがするのは不公平だ。それに女が机の上をふくのは当たり前だ」と話したという(筆者は女性たちから聞いた)。

 聞き流してしまえばそれでも良かったかもしれない。だが女性たちがいうには、全女性職員が軽蔑するこの男性職員の理不尽な命令が許せなかったとのことだ。そして女性たちは、この男性職員の上長である部長(当時は部長と職員の間には、天と地ほどの権力の差があった)に訴え、その行為を拒否した。現在なら当たり前だと思われる行動だが、15年前にはそういうことができる社会ではなかったのである。結果的に男性職員の行動は会社としては認めていないと判断された。男性職員はその後、出世コースから外れただけでなく、定期的な昇格の機会すらも全く与えられなくなった。

 筆者が考えるに、中高年の一部の管理者は会社での権限を「自分の物」と誤解しており、「他人への思いやり」が不足しているようだ。この男性も「自分が偉い」と思い込み、他人に対しては自己中心的な人間そのものであった。女性たちどころか、筆者も何回かこの職員の対応に苦慮していた。自身の行為が他人にとっては「嫌だ」と思うものであるかもしれないことを、一度は考えてみることが必要だろう。

 なお、複数の女性たちがこの男性職員の最も嫌な行為として挙げたのは、宴会の場で次のようなものだった。

 「鍋が好きなのでいつもそれを強制するんですよ。それだけなら仕方ないけど、彼はいつも取り箸を使わず、自分の口に入れた汚い箸で鍋をかき混ぜるんです。いかにも“おれのつばはきれいだから全員が口に入れても薬にはなっても、毒にはならないぞ”って感じで……。もう絶対に同席したくないし、お金を払ってもいいから宴会には行きたくありません。仕事だって全くできないし……」

 さて読者のみなさんはこうしたシーンをどう評価されるだろうか。コンプライアンスよりも先に、ぜひ品格のある行動を常に意識していただきたいと中高年の男性(筆者も含めて)にお伝えしたい。

 そして、セクハラでは賠償が高額化の一途をたどっているというのが実情だ。2011年に米国であった判決では日本円にして約76億円にもなった。76億円がセクハラ行為の代償である。日本では昨年まで1100万円が最高額だったと思われるが、そもそも金額は年々上昇傾向にある。近いうちに日本でも「億」単位の判決が下るかもしれない。小さな事案でも100万円前後が通例となっており、くれぐれもやましい考えは慎んでいただきたい。

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