被災地に雇用を! ICT教育は東北復興を後押しできるか(2/2 ページ)

» 2012年02月24日 13時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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いかに講師を育てるか

日本マイクロソフトの東北支店から望む仙台市内 日本マイクロソフトの東北支店から望む仙台市内

 東北UPプロジェクトの最初の具体的な活動として、2月20日〜21日に、NPO団体に向けたIT講師養成研修が宮城県仙台市にある日本マイクロソフト東北支店オフィス内で開かれた。今回参加したのは、「@リアスNPOサポートセンター」(釜石市)、「いわてNPO-NETサポート」(北上市)、「Save Takata」(陸前高田市)、「BHNテレコム支援協議会」(石巻市)、「寺子屋方丈舎」(会津若松市)の5団体に所属する14人。ほとんどの参加者は基本的なICTスキルは身に付いているものの、講師としてWordやExcelの使い方などを教えるという経験はないため、2日間の研修では「教え方」を中心としたトレーニングが行われた。

Excelの講義を担当した@リアスNPOサポートセンターの横澤京子さん Excelの講義を担当した@リアスNPOサポートセンターの横澤京子さん

 21日の研修の一コマでは、参加者の1人が講師役を務めてほかのメンバーに講義するという模擬演習が行われた。講師役は約5分間でExcelでの計算方法やWordでのビジネス文書作成方法を説明し、それに対してほかの参加者や研修全体を指導する教官からフィードバックを得るという流れだ。Excelの使い方を講義した@リアスNPOサポートセンターの横澤京子さんは「(聴衆に対して)手順を逐次確認したり、ジェスチャーを交えながら説明したりすることを心掛けた」と感想を述べ、それに対して受講者からは「丁寧で分かりやすかった」などのコメントがあった一方で、教官からは「教えるときには“みなさん”ではなく“みんな”という言葉を用いるほうが(講師自身も含めた)一体感が出るため望ましい」といった表現まで細かく指摘するフィードバックもあった。

Wordの講義を担当したBHNテレコム支援協議会の阿部真司さん Wordの講義を担当したBHNテレコム支援協議会の阿部真司さん

 参加者は今回の研修で学んだことなどを基に、約1カ月後にマイクロソフト認定トレーナーの資格試験を受ける。それをもって、3月から釜石、大槌、大船渡、陸前高田、石巻、登米、女川、会津若松を拠点に本格稼働する被災者に向けたICTスキル講習の講師として活動していく。

 なお、ICTスキル講習の内容は、「パソコン基礎&セキュリティ」(各2時間)、「インターネット&電子メール」(各2時間)、「Word、Excel、PowerPoint初級」(20時間)、「Word、Excel、PowerPoint応用」(30時間)、「Office365 クラウドサービスの活用紹介」が基本カリキュラムになっているが、受講者の年齢層は幅広く、スキルにもばらつきがあるため、状況に応じてカスタマイズしていくとしている。

ICTスキル習得のニーズは高い

 参加したNPO団体は今回のプロジェクトをどう見ているか。BHNテレコム支援協議会の阿部真司さんは現在被災地域でパソコン教室を運営しており、「ICTスキル習得に対するニーズは高い」と話す。パソコン教室に訪れる被災者の多くは高齢者で、これまでPCに触ったことがない人がほとんどだが、熱心に通っているという。また石巻ではテレワーク(在宅勤務)に関する求人なども出始めており、「今後はますますICTスキルを必要とする求人が増えていくだろう」と述べた。

被災地の現状を語るSave Takataの岡本翔馬さん 被災地の現状を語るSave Takataの岡本翔馬さん

 Save Takataの岡本翔馬さんは、「陸前高田は震災によって企業のオフィスや事務所は激減した。飲食店は営業を再開したところもちらほら見られるが、企業はこれから」と現況を説明する。そうした中で現地のハローワークに寄せられる企業求人の就業条件には、WordやExcelのスキルが入っているものがほとんどだという。陸前高田での求人に関しては、例えば、外食大手のワタミグループがコールセンターを新設するなど増えつつあるが、就業にあたりやはりPCスキルは不可欠だという。

 今回参加した被災地域のNPO団体は5つだが、実績を基に今後さらにヨコ展開していく方向で検討している。元々、東北はNPOが少ない地域で、例えば、岩手、宮城、福島の3県で内閣府が認証するNPOの数は2212団体(2011年12月31日時点)。東京(7123団体)や大阪(2913団体)の数字と比較すると、いかに少ないかが分かる。しかし、震災後には新規立ち上げなども見られるようになり、被災地域でのNPO活動は活発化しているといえよう。

 こうした地元の団体と積極的に連携して、一刻も早く復興できるようサポートしていきたいと、プロジェクト関係者は力強く語った。

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