McLarenのレーシングマシンも活用 すべてをインメモリ技術が支えるSAPPHIRE NOW 2012 Orlando Report(1/2 ページ)

2日目を迎えたSAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2012」は、共同CEOのスナーベ氏が基調講演に登壇。近未来の世界について語ったほか、先進ユーザーとして英McLaren Groupの取り組みが紹介された。

» 2012年05月16日 14時20分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米国・フロリダ州オーランドで独SAPは年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2012 Orlando」を開催している。2日目となる5月15日(現地時間)、午前のキーノートセッションでは、SAP 共同CEOのジム・ハガマン・スナーベ氏が登場し、近未来に向けて同社が歩んでいくべき道のりを示した。

 SAPは現在、注力する事業の柱として「Industry and LOB」(業務別)「Analytics」(分析)「Database&Technology」(データベースと技術)「Mobile」(モバイル)「Cloud」(クラウド)という5つを掲げている。例えば、データベース事業においては、一昨年に買収完了した米Sybaseとのシナジー効果を出すための製品統合を進めており、モバイル事業では、4月10日に発表した米Sycloの買収や、米Adobe Systems、米Appcelerator、米Senchaとのパートナー協業によって、SAP独自のモバイルプラットフォームを確立する。

 また、これらすべてを基盤として支えるのが、インメモリコンピューティング製品「SAP HANA」である。前日の基調講演において、「HANAはITの歴史の中で最も息を飲むようなビッグデータの発明だ」とマクダーモット氏が強調したことからも、HANAに込められた同社の熱意がひしひしと伝わってくる。

これまでの40年、これからの40年

SAP 共同CEOのジム・ハガマン・スナーベ氏 SAP 共同CEOのジム・ハガマン・スナーベ氏

 ここで少し歴史を振り返ってみよう。SAPは今年、創業40周年というアニバーサリーイヤーを迎えている。IBMを退社した5人のエンジニアによって同社は1972年に設立された。その当時、米Hewlett Packard(HP)のポケット電卓「HP-35」が最先端のコンピュータ技術の1つとして注目を集めた時代だった。そのころ、SAPでは自社でコンピュータシステムを持っておらず、マシンを借りてソフトウェア開発などを行っていた。1970年代末に初めて独Siemensのメインフレームシステムを購入したが、メモリ容量は2メガバイトで、「今では電子メールの添付ファイルと同じ程度の大きさ」(スナーベ氏)である。

 そうした時代に産声を上げたSAPは、ビジネスアプリケーションを中心に着実な成長を遂げて、今ではIT業界においてリーダーシップを発揮するまでの存在となった。そして設立から40年後の今、64ギガバイトのメインメモリ、インターネット、HDカメラ、ビデオシステムなどあらゆる技術がモバイル端末に集約され、ポケットに収めることができるようになっている。この数十年間の技術進化のスピードを感じずにはいられない。

 では、これから40年後、どのような世界になるのか。いかなるITテクノロジーが登場するのか。「娘に尋ねたところ、“テストで良い点を取るように脳がインターネットにつながればいい”と答えた」というジョークを交えた後で、「2052年の世界を想像することはほぼ不可能だろう」とスナーベ氏は述べる。

 一方で、予測できることもいくつかある。例えば、世界の総人口が70億人から90億人に増加し、特にアジアでは、都市人口や65歳以上の高齢者人口が急増する。これらは食糧問題や資源問題、医療問題などを引き起こす可能性が高い。

「しかしながら、技術革新は持続可能な世界を作る上で大きな役割を果たしている。すなわち、われわれSAPが未来を作るのだ」(スナーベ氏)

 そうした中、具体的にSAPがメッセージとして打ち出すのが、「モバイル」「クラウド」「インメモリ」という3つの基軸である。「今、根本的なパラダイムシフトが起きている。5年以内にすべてがモバイルになり、すべてがクラウドになり、すべてがインメモリになるのだ」とスナーベ氏は力強く語る。

 例えば、コンシューマーはいつでもどこでも利用可能なアプリケーションやデータを求めており、それを提供するには、モバイルとクラウド、インメモリを組み合わせることが不可欠であるという。

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