コンプライアンスにみる公務員と民間企業の違いえっホント!? コンプライアンスの勘所を知る(1/2 ページ)

今までは公務員でも民間企業でもあまり区別することなく、組織におけるコンプライアンスの考え方がほぼ同じという視点で議論してきた。そこで今回は両者の違いについて考えてみたい。

» 2012年06月08日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

国立大学の職員は公務員?

 ほとんどの方がご存じのように、国立大学は2004年4月から「国立大学法人」となった。職員の身分はそれまで「国家公務員」だったのが、「非公務員型法人職員」へと変わっている。聞くところによれば、筆者の母校もそういう変革の波にさらされ、職員の方々は見た目には全く変化がなかったものの、内部ではさまざま葛藤があったという。

 さて、実際にはどう変わったのだろうか。今回はこの解説を試みることで、表題にある公務員と民間企業の違いを浮き彫りにできるだろうと考える。

X教授は共同研究先であるY企業の株を購入できるか?

 以前は国家公務員倫理規定に抵触するので、一切このような行為ができなかった。しかし、現在では大学ごとのコンプライアンスや利益相反マネジメント規定などで許可されていれば(もしくは申請して認められた場合)構わない。ただし実際問題としては壁がまだ高く、筆者の友人の一人は株の購入を断念したという。時間が経つにつれてその壁が低くなり、周囲の意識も変化しないと、理屈では認められても平然と実行することは難しい。

副業は認められる?

 公務員には副業禁止規定がある。民間企業では企業により異なる。この不況下で副業を一律に禁止するのはいかがなものかと規則を緩和した企業もある。だが原則的には禁止というところが多い。特に上場企業ではその“プライド”もあってか、筆者の友人が副業を申請した際に会社の役員から、「うちで食べていけないならどこにいってもだめだ」と言われたそうだ(収入目的ではなく、将来したい職業のアルバイトだったが、本当の目的は言えなかったとのこと)。

 これでは公務員も民間企業もあまり変わらないではないかと、読者の方々は思うかもしれないが、地方公務員は意外と副業をしているケースが多い。一例が兼業農家だ。田植えや稲刈りといった一斉作業が必要な時には、公務員といえどもアルバイトをする。このことを悪く言うつもりはないし、諸外国でもそうした環境で副業しているケースが多いと聞く。

 だが、副業禁止が明示されている民間企業ではこの行為はどうなるのか。上場企業であるほどにマニュアルに従うのが通例だ。つまり、民間の方が融通はないかもしれない。地方なら村役場の上司に、「明日は田植えなので午前中は出勤しませんが構いませんか?」と部下が聞く。すると上司は、「君のところは明日だったな。私のところは来週なのでその時は頼むぞ」という会話が思い浮かんでくる。

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