かつてアジアの中継貿易拠点として栄えた沖縄が、再び輝きを取り戻そうとしている。今後の沖縄の経済発展に向けて中核となる情報通信産業を強化し、アジアマーケットに対する国内外の需要を取り込んでいく。
南北約400キロメートル、東西約1000キロメートルの海域に浮かぶ島々からなる沖縄。東京をはじめとする本土の主要都市から遠距離であることや、100以上の島からなる島嶼(とうしょ)性などの理由から、これまでは経済的に不利とされていた沖縄が今、注目を集めている。
その背景にあるのは、アジアの急速な経済発展である。近年、中国やインドをはじめアジア諸国は目覚ましい成長を遂げており、生産拠点の立ち上げや新規市場の開拓などを目的に、日本企業の進出は後を絶たない。世界銀行が先月発表した報告書によると、東アジア途上国における2012年の経済成長率は7.6%(前年比0.6%減)だったものの、2013年には8.0%と再び上昇傾向にあり、今後もアジアへのビジネスシフトは当面変わらないだろう。
そうした中、アジア各国の近隣に位置する沖縄の地理的優位性が、日本とアジアをつなぐ架け橋として大いに期待されている。実際、既にビジネス界ではさまざまな動きが見られる。例えば、全日本空輸(ANA)が2009年10月から那覇空港を国際貨物の拠点とし、ソウル、上海、台北、香港、バンコクといったアジア主要都市と国内空港とを結ぶ物流ハブ事業をスタートさせるなど、業種業態を問わず、アジア展開を図る企業の多くが沖縄という立地に目を向け始めている。
一方で、日本全体の経済状況は依然として厳しい。今年、沖縄は本土復帰40周年を迎えたわけだが、この間に日本を取り巻く経済環境は激変した。1950年代半ばから続いていた高度経済成長期に陰りが見え始め、1970年代半ばには成長が鈍化。その後、1980年代にバブル景気を経験するも、バブル経済の崩壊とともに、“失われた20年”と揶揄される経済不況が今なお進行している。かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界から称えられた日本が再び立ち上がる、その重要な鍵を握るのが沖縄なのだ。
今年5月15日に開かれた沖縄復帰40周年記念式典の中で、野田佳彦首相が「世界の重心がアジア太平洋地域に移りつつあり、アジア太平洋の玄関口として沖縄が新たな発展の可能性を身にまとった。日本全体をけん引し、アジア太平洋の時代を先頭に立って切り拓いていくのは沖縄だ」と述べたことも強い期待感の表れである。
実は歴史をひもとくと、元々、沖縄とアジア諸国との結び付きは強い。15世紀から19世紀後半まで続いた琉球王国時代には、東シナ海における中継貿易の拠点として、日本、中国、朝鮮、東南アジア諸国などと交易することで、王国を独立国家として維持、経済的繁栄を築いた。また、中国の冊封国として人材や文化などの交流が盛んに行われていた。時を超えて、再び沖縄がアジア経済の表舞台に躍り出る機会が到来したといえよう。
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