スマートフォンやタブレットを求める社員にどう応えるかジレンマに悩む企業に(2/2 ページ)

» 2012年06月25日 10時00分 公開
[ITmedia]
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「仕事でスマートフォンを使いたい」って自然な気持ちだよね

 「みんな、忙しいところすまないがミーティングをするぞ」

 4月のある日。年度初めに行われた営業部門と情報システム部門の定例会議を終えた情報システム部長が、難しい顔をしてオフィスに戻ってきた。すぐにクライアント管理チームが呼ばれる。チームリーダーの課長たちと一緒に、部長のもとへ急ぐわたし。

 部長の話によると、今日の定例会議で営業部門のほうから、スマートフォンを業務に利用するための社内アクセスを認めて欲しいという要望が挙がったという。ウチの事業部門は“現場中心主義”。なかでも稼ぎ頭である営業部門の発言力はとても強い。部長は従わざるを得ないと考えているみたい。すぐに、クライアント管理チームで対応策を考えるようにと指示が出る。

 確かに最近、営業スタッフがスマートフォンやタブレット端末を持ち歩いて利用している様子をよく見かけるのよね……。わたしたち情報システム部が知らないうちに広まっているんだから、個人所有のものを社内に持ち込んでいるのだろう。

 「認めるわけにいかないだろう」と課長は腕を組む。「ITガバナンス上、個人所有の端末をネットワークにつなぐわけにはいかないからね」

 課長の言うことにも一理ある。だけどわたしたち情報システム部が禁止したとしても、営業部門が引き下がってくれるとも思えない。だってもう会社のメールをスマートフォンで見てる人がいるんだから。

 スマートフォンやタブレットで簡単にネットができるこの時代、それを仕事でも使いたいというのは自然な気持ちだとも思う。おそるおそる「このまま見て見ぬフリをして、もし情報漏えい事故が起きれば、“情報システム部門はなにやってたんだ!”って怒られるかもしれませんよ」と言ってみたわたし。すると「そうか、ではキミ主導で対策を考えてくれるかな」と課長に丸投げされてしまった(泣)。

BYODにする? それとも会社支給?

 そうは言っても、わたしが選べる選択肢はそう多くない。たまたま今年は、営業部門のクライアントPCを一部更改する予算を見込んでいる。もちろんプロジェクトを担当するのはわたしたちクライアント管理チーム。急いでざっくりとした導入コストを計算し、修正予算を起案して「モバイル環境改善」という名目で稟議書を出したところ、あっさりと承認された! (さすが営業が強いウチの会社だけあるわね)と、変なところで感心するわたし。

 いよいよプロジェクトがスタートする。もともとは日々のクライアント管理業務をこなしながらクライアント更改プロジェクトを推進する計画だったけど、モバイル環境改善プロジェクトだけは分離して推進することにした。

 まずは営業部門がどのようなモバイル環境を望んでいるのか、アンケートを取ってみることに。すると、約6割のユーザーが自分の端末をそのまま使いたいという意見だった。これがいわゆるBYOD(Bring Your Own Device)ってヤツなのね……。

 確かにユーザーにとってBYODは便利だろう。会社にとっても、端末コストがかからないというメリットがある。しかし、モバイル端末管理(MDM=Mobile Device Management)の面で不安が残る。アンケートには、会社の機密情報を個人の端末で取り扱って、万一盗難や紛失に遭ったとき、初期化(ワイプ)機能を使ってすべてのデータを消してもよいかという項目を聞いてみると、8割以上のユーザーは「ノー」と回答してきた。自分の端末を便利に使いたいのだけれど、データは消されたくないというわけ。

 確かにMDM製品には、会社のデータを分けて保存し、万一の際はその領域のみをワイプすることができるものもあるが、安全性を確実に担保できるかどうかの不安がある。結果的に、スマートフォンを業務に利用したいというユーザーから申告を募り、上限台数を決めて会社支給の携帯電話をスマートフォンにリプレースすることにしたわたし。

 これは、今年は無理に一斉切り替えをせず、一部の先行ユーザーに導入してもらうことで、情報システム部がトレーニングの面倒を見る負担を減らすことも期待しての策だった。

ノートPCの管理も充実して一石二鳥!

 プロジェクトでは、法人契約している携帯電話キャリアにも相談して、会社から支給するスマートフォンの機種選定を行った。また、端末に導入する社内アクセス用のアプリケーションも決定した……といっても今回は、社内のグループウェアをスマートフォンから利用できるという機能に限定している。スモールスタートってやつね。

 問題は、支給したスマートフォンをどうやって管理するかよね。情報システム部門のサーバ管理チームでは、日立の「JP1」を社内標準の運用管理ソフトウェアとして採用している。実は、クライアント管理チームではまだ本格的に導入できていないのだが、ウチの情報システム部はひんぱんにチームローテーションしてるから、全員がJP1に慣れている。そのJP1にMDM対応機能があるかどうか調べてみよう。

 確認してみると、JP1の資産・配布管理製品「JP1/IT Desktop Management(JP1/ITDM)」にはMDM製品と連携して、スマートフォンの情報を収集したり、JP1/ITDMの操作画面から、リモートロックやワイプを行う機能が用意されているという。これなら情報システム部門主導でスマートフォンを管理できるようになるし、もし盗まれたり紛失したりしたスタッフがいても、JP1/ITDMからロックやワイプの指示ができるってこと。

 プロジェクトはスケジュールが滞ることなく順調に進み、下半期が始まる10月から会社支給のスマートフォンの利用が始まった。先行導入したユーザーたちは、大手を振ってスマートフォンを業務で使えることに満足しているよう。早くも「自分も使いたい!」という要望も増えてきた。

 わたしたちクライアント管理チームにとっては「スマートフォン管理」という業務が増えたことになるが、負担には感じない。万一の事態はまだ起きてはいないけど、そのときはJP1/ITDMとMDM製品が連携することで解決してくれるという安心感もある。また、JP1/ITDMを導入したことにより、これまでは不十分だったモバイル用途のノートPC管理もきちんとできるようになった。一石二鳥というか、少ない予算でクライアント管理業務を改善できたことに満足しているわたし。

 また情報システム部では、これまで携帯電話を管理してきた総務部と調整し、来年度に営業部門すべての携帯電話をスマートフォンに切り替えるためのプロジェクトを新たに発足させた。将来的には、要望の高かったBYOD対応も実現したいところ。これが、わたしたちに出されている今後の宿題……。

※2012年6月現在、JP1/ITDMが対応しているMDM製品はMobileIron 4.5です。

※MobileIronは米国におけるMobileIronの登録商標です。

提供:株式会社 日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部
掲載内容有効期限:2012年7月24日

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