企業のデータ分析力を支える3本柱アナリストビュー(3/4 ページ)

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]

データ分析を活用するための要件とは

 では、データ分析に取り組み、ビジネスを活性化するためにはどのような要件が必要となるのかを考えてみよう。

 整備されたDWHや使いやすい分析ツールは、データ分析力を高める要素となるが、それだけでデータ分析を支えることはできない。データ分析力とは「データ環境」「リテラシー」「ツール環境」の3つで成り立っている。

 それぞれの柱を詳しく説明する。データ環境は、分析ニーズに足る情報量を備えていることに加えて、データの意味、所在、所有者の明確化、データの品質や鮮度の確保など、管理面の組織対応が深くかかわる。企業唯一の真実を提供するデータ環境であることも重要である。チューニングやアクセス制御など、性能、セキュリティに関する管理もデータ環境の一要素である。

図7 企業のデータ分析力を支える要素(出典:ITR) 図7 企業のデータ分析力を支える要素(出典:ITR)

 ツール環境とは、BIツールに代表される、クエリ機能、レポーティング機能、分析機能、データマイニングや統計解析ツール、全文検索やテキストマイニングツールなど、対象となるデータを分析するために、データフォーマットと利用目的に応じて適切なツールを配置するものだ。さらに、各ツールに対する操作トレーニングや使い方をサポートするヘルプデスクの配置もツール環境を構成する要素である。

 ここでの情報リテラシーは、統計に関する知識やツールの操作能力だけでなく、データ活用に関するアイデア創出や仮説立案などの能力が含まれる。

 さらに、これら3つの柱を下支えしているのが、データ重視の企業風土である。経営者、ビジネス部門のユーザー、IT部門のすべてが分析の重要性を理解した上で、それぞれの立場から3つの柱の整備や能力向上に強くコミットしている状態を築くことが重要となる。より良いデータ環境を構築するためには、全社レベルでデータガバナンスの整備に取り組まなければならない。経営資源としてよく挙げられるのは、「ヒト」「モノ」「カネ」の3つであるが、情報化社会と呼ばれる現代では、「情報」も加えた4つが基本とされることも多い。

 情報とは、データを基に生み出されるものであり、企業において、顧客の理解、製品開発、戦略立案といったあらゆる活動にデータが必要となる。ヒト、モノ、カネといったほかの経営資源の状況を把握するためにもデータが用いられることを考えれば、企業はデータをきちんと管理、統制しなければならないはずである。

 IT業界ではGIGO(Garbage In, Garbage Out)という有名な言葉がある。サーバ仮想化が進もうと、クラウドコンピューティングの時代になろうと、どんなに性能が高いDWHアプライアンスやHadoop、インメモリDBなどの新たなデータ管理製品を導入しようとも、基のデータが正しくなければ正しい結果は得られないという事実に変わりはない。

 さらに、ビジネスが複雑化し、データのボリュームと種類、そして利用範囲が拡大している現在では、データガバナンスが不十分なままデータを利用すると、効率や投資対効果が低下するだけでなく、意思決定においての判断ミスを招く可能性が高まり、企業にさまざまな危険をもたらすことになりかねない。

 データ分析環境においては、ツールであるソフトウェアの選択と、それを使いこなすための準備が重要となる。ITRがアイティメディアと2010年12月に共同で行った「企業におけるソフトウェア活用に関する調査」では、87.4%が情報分析ツールとしてExcelなどの表計算ソフトウェアを利用していると回答している。TechTargetジャパンが2011年12月に実施した「大規模データ(ビッグデータ)活用に関するアンケート調査」でも分析業務で利用しているツールとして53.4%がExcelと回答している。

 確かにExcelは多くの企業が利用しており、非常に汎用性の高いデータ分析ツールであるが、必ずしも全てのデータ分析に対して最良のツールというわけではない。高度なデータマイニングやテキストマイニングには専用ツールを利用した方が、より詳細な分析結果を得られる場合がある。

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