目指せ、古典文学となるブログ!オルタナティブな生き方 片岡麻実さん(2/3 ページ)

» 2012年07月12日 11時30分 公開
[聞き手:谷川耕一、鈴木麻紀,ITmedia]

良き出会いがあり、IT講師の道へ

 研究を続ける道もあったが、修士終了後は就職をすることにした。とはいえ、文学部出身の大学院生には就職先の選択肢はあまりない。少ない選択肢の中から彼女が選んだのはIT企業だった。業界知識がなかったので「アイウエオ順に会社を選んで応募するような状況」だったとのこと。

 無事に開発系ソフトウェア会社に就職が決まった。しかし仕事が始まってみると、自分はプログラミング知識はまったくないのに、同期入社のほとんどが理数系か情報学科出身で、研修についていくのが大変だった。だがそこは努力家の片岡さん、勉強好きだったのが功を奏し頑張ってキャッチアップ、半年後には当時の情報処理技術者試験二種に合格するまでになった。

 開発の仕事は、作ったプログラムが世の中で利用されているという実感があり、うれしいものだった。しかし自分はプログラミングにあまり向いていないと実感することも多く、大規模開発の仕事を早々に辞めてしまう。

 その後、もう少しITスキルを向上させたいと考え、職業訓練校に通う。そこで学んだのは、Visual BasicやMicrosoft Access、Excel VBAなどの技術だった。「当時は、ExcelのVBAでマクロを組んで簡単に自動集計できるようにするといったことができる人があまりいなくて、そういう人材の需要がけっこうありました」という。

 職業訓練校で得たスキルが評価され、卒業後すぐに仕事に就けた。そこでは事務系の仕事をこなしつつ、ExcelのVBAでマクロを組んで売上の自動集計をしたり、Accessを活用した営業支援システムを作ったりした。

 数年働いたころ世の中の流れを見て、これからはWeb系システムに関わる仕事をすべきと考えるようになった。そこで2002年12月ごろから、独学でHTMLのタグを手打ちしてホームページを作り始めた。2004年に会社を退職し、ITの学校にも通った。

 ちょうどそのころ、職業訓練校でアシスタント講師を募集していた。片岡さんも声をかけてもらったが、自分は講師向きではないと思っていたので最初は断っていたそうだ。しかしその後もずっと頼まれ続けたこともあり、「それでは少しだけ」と依頼を受けることに。これが転機となって、片岡さんの職業人生は変化していった。

生徒の喜ぶ顔を見たい

ガラスの仮面や古典について楽しそうに話す片岡さん。サクマ式ドロップスのように、いろいろな表情がクルクルと飛び出してくる。

 アシスタント講師として経験を積んだころ、良い先輩講師との出会いがありメイン講師を担当することになる。

 最初は緊張してなかなかうまくいかなかった。そんな片岡さんを見て、ある日先輩講師がアドバイスをくれた。それは少し奇抜なもので、授業の進め方や話し方に加えて「生徒に飴を配りなさい」というものだった。飴と鞭の比喩ではなく、本物のお菓子の飴だ。「片岡さんのキャラクターなら、飴を配るとそれが笑いにつながり、教室が和む」というのがその理由だった。片岡さんが実際にそれを実践したところ、本当に生徒がリラックスし、無事メイン講師に慣れることができたという。

 その後はIT講師としてスキルを積む一方で、発達障害のある子どもたちにPCの使い方を教える仕事なども行っている。片岡さんは講師を仕事として続けている理由の1つを、「PC操作ができなくて困っていた人が、できるようになって喜んでいる顔を見るのがうれしいから」だという。「生徒たちに教えていると、自分自身が楽しくてついつい笑ってしまうんです」と楽しそうに話す。子どものころ自分がさまざまなことができなかったので、生徒にできない人がいてもあまりいらいらしない、そこが講師としてのプラスの要素なのかもしれないと自己分析する。

 講師を続けてさまざまな生徒と関わったことで、「相手の適材適所が分かるようになりました」ともいう。生徒の「どこを伸ばせば、どういった分野で花開くのか」が、顔つきやしぐさ、洋服の選び方などを見るだけでなんとなく分かるようになったというのだ。

 片岡さんはかつては自分のことを、場の空気が読めないタイプの人間だと思っていたという。しかし今振り返るとそれはちょっと違っていて、空気は読めるのだが、読んだ結果自分が何をどうしたらいいのかが分からなかったようだとのこと。いまは講師として、教室の中の空気を的確に読み取り、何をどうすればいいか分かってきたそうだ。これはもちろん、経験がしっかりと身についた結果でもあるのだろう。

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