SAPジャパン流のBring Your Own Device手段の1つでも本格的(2/3 ページ)

» 2012年08月02日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 SAPがモバイルを本格導入したのは2010年。井口氏が述べたようなコンシューマーのITトレンドを企業ITにどう取り入れるかという観点から、会社としてまずBlackBerryを、次いでiPhoneおよびiPadを導入した。端末の管理や基本的なセキュリティ対策はBlackBerryでは専用の仕組みを使い、iPhoneやiPadを自社製品の「SAP Afaria」を利用する環境を整備。社員は主にメールなどのコミュニケーション手段に活用した。

 BYODの導入は2011年。3月11日の東日本大震災がきっかけだ。

 SAPジャパンで社内IT業務を担当するクライアントテクノロジー フィールドサービス シニアマネージャーの佐藤歩氏は、「震災前から営業など300人ほどが活用していたが、震災対応でより多くの社員に連絡できる手段を確保しなければならず、300台の機器を緊急調達した」と振り返る。

 通常は、こうした規模の台数の機器を調達して社員に支給するまで2カ月ほどかかるという。しかし震災時は、メールと無線LANの利用に限定するなどして約1週間で決行。個人端末からも会社のメールが利用できるようになり、SAP全社としてまず日本でのBYODの本格導入が始まることになった。

 同時期にはオーストラリアやシンガポールの現地法人でもスタート。米国やインドなどが続き、最近ではドイツ本社でも始まったという。EU圏にはプライバシー保護の法規制が厳しいため、準備に時間を要したためだ。

 SAPジャパンでのBYOD導入は以下のプロセスで進められた。

  1. 初期の対象ユーザーはどの職種・部門にするか(まず開発、営業、経営および部門の管理者に決定、現在は全社員)
  2. 利用シーンのモデル(セキュリティ要件やポリシーの策定)
  3. 運用環境の検討(BYODを許可する業務システムや管理手法など)
  4. ロードマップの策定
  5. ユーザー活用のフレームワーク構築(例えば、モバイル端末に適した承認アプリの仕組みなど)

 BYODを希望する社員は「BYODプログラム」に参加する。その際、個人の端末を会社側の端末管理システムの支配下に組み入れることや、ルールやポリシーに従うことなどに同意する文書にサインしてもらう。同意書の文面はIT部門や法務や人事、経営企画など6つの部門が共同で検討・作成した。

 BYODプログラムに参加すると、社員の端末にメールが送られる。社員がメールのリンクをクリックすると、管理システムに自分の端末が登録され、端末側に会社のメールアカウントやネットワーク接続設定、ポリシーなどが適用され、利用できるようになる。

 業務に必要なアプリケーションは、社内のアプリストアから自分で選んでインストールする。自社製品のほか、会社が推奨するサードパティーのアプリも利用可能。端末を無くした場合は、Afariaからリモート操作で設定情報や業務に関するデータのみを消去できる。BYODのためのサポートマニュアルや社内コミュニティサイトを提供しており、社員がセルフサービスで問題解決をできるようにもしている。

モバイル端末の運用管理での施策

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ