画素数と画質の正体、デジタルカメラにモノ申す!“迷探偵”ハギ−のテクノロジー裏話(3/3 ページ)

» 2012年08月03日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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全てのデジタルカメラに「完全消去」機能を標準搭載すべき

 これまでの記事でも度々お伝えしているが、メモリカードなどを他人に貸し出すのはできるだけ避けてほしい。なぜなら、悪意を持った人物が、消去された画像を復元して悪用しかねないからだ。筆者がいた会社で、「SDカードだけ貸してほしい」「CFカードだけ……」「メモリスティックだけ……」というような人が多く、上役に貸してしまったことも多々あった(今では明示的に規則で禁止されているが10年ほど前にはなかった)。

 メモリカードは、デジタルカメラ本体で「初期化」して返却されるのだが、筆者はその当時、情報セキュリティの研究としてデジタル機器での「完全消去」機能をテストしていたので、実験で画像データを復元してみた。その結果、家族旅行や友人の記念写真、お子さんの結婚式といったものが多々見つかり、ほぼ100%復元できてしまったのである。当然だが、復元したデータの内容は全て他言していないし、完全に消去をして保存もしていない。

 筆者は学会を通じてメーカーに要望書を書いたこともある。最近ではデジタル一眼レフを中心に、メモリカードのデータを完全消去できる機種が登場してきたので良い傾向にあるが、廉価版製品も含めて全ての機種でそうしていただきたい。機種によってパンフレット上にその記載がないメーカーもあり、口コミやツイート内容で確認するケースもあったので、ユーザーにきちんと説明した方がいいだろう。

電池は汎用品を使いたい

 最近の機種では電池の消耗をある程度は抑えるようにはしているそうだが、高度なソフトウェア処理や画素数の増加で消費電力を抑えるのが困難な機種も少なくないようだ。専用の充電池は、予備を購入しなければならず、価格も高い。電池が無くなって旅行先で困るような場合があるので、できれば単三のアルカリ電池のように簡単に手に入れられる汎用品を使えるようにしていただきたいと思う。

ケータイとどう差別化するのか

 筆者は、デジタルカメラとはやはりデジタルカメラ単体であってほしいという立場だ。機能は単純で使いやすいものがいい。スマートフォンのカメラ機能などのようなものは、何かの犠牲に成り立っている。デジタルカメラユーザーのすそ野を広げることにはなっても、デジタルカメラで写真を撮る楽しみの幾つかは損なわれてしまっているような気がして残念でならない。

 メーカーはこれからのデジタルカメラのビジネスをどう考えているのだろうか。戦略を見い出せていないメーカーはどんどん脱落していくだろう。皮肉にもデジタルカメラを世界で初めて発明したEastman Kodakは、その発明品の発達速度に追従できなかったといわれる。富士フイルムのように将来の予想を英断して全速力でデジタルにシフトした企業もある。

 筆者をはじめ一般のユーザーはわがままだ。製品やメーカーへの要求も強い。それは製品やメーカーへの期待の表れでもあり、デジタルカメラで写真を撮ることの楽しみをもっと広げてほしいという希望でもある。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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