Gartnerの予言Weekly Memo

米Gartnerが先頃、2013年以降のITトレンドを見通した「Gartner Predicts 2013」を発表した。その中から4つのPredicts(予言)に注目してみたい。

» 2012年11月19日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

新たな利用環境でのセキュリティ脅威を指摘

 米Gartnerが先頃、IT部門およびユーザーに長期的かつ大きな変化を与える重要な展望を記した「Gartner Predicts 2013」を発表し、同社日本法人であるガートナージャパンが11月13日にその和訳を公表した。

 同レポートは、同社のリサーチ部門が最新のITトレンドから重要かつ注意すべき予見として選定したもので、11項目が挙げられている。その中から4つをピックアップして、Gartnerの見解とともに紹介しておきたい。

 「2017年までに、従業員によるモバイルデバイスでのコラボレーションアプリケーション使用の増加により、企業のコンタクト情報の40%がFacebookに漏えいする」

 Facebookはスマートデバイスにインストールされているアプリケーションのトップ5の1つであり、新しいコンタクト先を見つけるうえでも非常に有用なことから、多くの企業が相互リンクを認めざるを得ない状況になっている。企業のITインフラとやりとりするデバイス上に消費者向けアプリケーションと企業向けアプリケーションが物理的に混在する状況に対し、多くの企業が不安を感じている。

 しかし、企業が管理している公認のアプリケーションと消費者向けアプリケーション間の情報のやりとりを可能にする基盤となっているテクノロジーについての議論は、ほとんどされていない。これらのやりとりを追跡管理することは難しく、情報の伝送を管理するテクノロジーの構築と展開、管理はさらに難しいのが現実である。

 「2014年にかけて、従業員所有のBYOD利用のデバイスは企業所有デバイスの2倍以上の率でマルウェアの被害を受ける」

 企業ネットワークは、BYOD(個人所有デバイスの業務利用)環境の原型である大学などのキャンパスネットワークと同じ環境に近づくだろう。キャンパスネットワークにおいて、大学側は学生が持ち込むデバイスを十分に管理できないため、ネットワークアクセスを統制するポリシーを強制適用し、ネットワークを保護することに重点を置いていた。

 Gartnerでは企業もこれと同種のアプローチを採用し、自社のポリシーに準拠していないデバイスのアクセスを禁止または制限するようになるとみている。BYODを採用する企業は、従業員が持ち込むデバイスについて、企業ネットワークへのアクセスを認めるデバイスと禁止するデバイスを分ける明確なポリシーを確立する必要がある。

 BYODの時代において、セキュリティのプロフェッショナルは、モバイルデバイスの脆弱性に関する情報とセキュリティに関する情報を注意深くモニタリングし、ポリシーを適応させていくことで適切に対応していくべきである。

市場構造の変化によるIT業界大再編を予言

 「2015年までに、グローバル1000企業の40%が、ビジネスプロセスを変革する中心的な仕組みとしてゲーミフィケーションを採用する」

 関係各所の関与レベルの低さが原因で、ビジネスの変革を目指すプロジェクトの70%が失敗に終わっている。ゲーミフィケーションによってこのような関係各所の関与を促し、作業の透明性を確保し、従業員の行動とビジネスにおける結果を結び付けることが可能になる。

 企業はフィードバック、評価、インセンティブなど、ゲームプレーヤーの関心を引きつけるためにゲームのデザインと同じテクニックを採用することで、ビジネスプロセスの変革に必要な関係各所の関与を取りつけている。

 ゲーミフィケーションはすでにさまざまな業界で効果を発揮しており、その世界市場は2012年の2億4200万ドルから2016年には28億ドルへと成長し、2013年には企業のゲーミフィケーションが消費者のゲーミフィケーションを凌駕することになるだろう。

 「2014年までに、市場の統合によりITサービスベンダーのトップ100社中20%が市場から姿を消す」

 クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルメディアによる「力の結節」の台頭と、不透明な経済環境によって、現在約1兆ドルの規模を有する世界のITサービス市場の再構築が加速する。2015年までに、ITサービスベンダーの売り上げの15%程度が低コストのクラウドサービスに浸食され、サービスの工業化と付加価値強化に十分に投資していない大手ベンダーの20%以上が、M&A(合併・買収) によって市場から姿を消すだろう。

 この動きはまた、単なるオフショア/ニアショアのアプローチが制限される一方で、低コストなITサービスのオンショア化が進むか、グローバルな人材配置の再考が不可避になるという、旧来のITサービスベンダーにとっては困難な状況が到来することを意味している。

 CIOはITサービスで利用するベンダーおよびそのタイプを改めて評価しなければならないが、とくにインフォメーション、モバイル、ソーシャルの戦略をサポートするクラウドに対応したベンダーを重点的に評価する必要がある。

 1つ目と2つ目は、モバイルデバイスを中心とした新たなIT利用環境におけるセキュリティ脅威の指摘である。また3つ目は、ビジネスプロセスの変革にゲーミフィケーションが効果を発揮するようになるとの見方で興味深い。そして最も衝撃を受けたのが、4つ目のいわばIT業界大再編の予言だ。このほかの7項目についても機知に富んだ予言ばかりなので、ご興味のある方はガートナージャパンのサイトを覗いてみていただきたい。

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