「Lotus」に幕引き、ソーシャルへさらに大きく舵を切るIBMIBM Connect 2013 Orlando Report(2/3 ページ)

» 2013年01月29日 12時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 ソーシャルといえば、TwitterやFacebookを思い浮かべる読者も多いだろうが、IBMでは単独のツールではなく、ビジネスを差別化したり、スピードアップする次世代のプラットフォームとして売り込む。ソーシャルによる「つながり」は、オープンなコラボレーションによってをビジネスをスピードアップするだけでなく、「個」に対応したきめ細かなマーケティングやサービスを提供できたり、より優れた人材を発掘できるようにしてくれるからだ。

さらなる成長へソーシャルソフトウェアを導入

BoschのフリードリッヒCIO

 この日、ユーザー企業のトップバッターとしてステージに招き上げられたのは、自動車部品最大手、Boschのゲルト・フリードリッヒCIOだ。ドイツに本社を置く同社は、世界で36万人が働き、年商は515億ユーロに達する。

 「グローバリゼーションと組織の枠を超えたコラボレーションがわれわれの課題。さらになる成長のためにはソーシャルネットワークを必要としている」とフリードリッヒ氏は話す。

 同社ではソーシャルネットワーキングのプラットフォームであるIBM Connectionsをパイロット導入しており、既に生産ラインの移設に掛かる期間の短縮など、大きな成果を生んでいるという。数カ月後には全社員に展開を計画しているほか、将来はビジネスインテリジェンスも強化し、次世代のネットワーク化された組織へと進化させたいとしている。

 IBMはこの日、新しい「IBM Connections 4.5」を3月にリリースすることを明らかにした。新しいバージョンでは、ドキュメント管理機能を組み込み、より幅広いコンテント、例えば、Twitter、Facebook、音声や映像なども分析し、課題の解決や競争優位に生かしやすくするという。

世界で最も強力なコンピュータは「人」

KenexaのカーサンCEO

 昨年末にIBMによる買収が完了したKenexaの人材募集や人材管理サービスもソーシャルネットワークの「つながり」が企業の競争力にむすびつく分野のひとつだ。ペンシルベニア州ウェインに本社を置くKenexaは、フォーチュン500の企業の半数以上をはじめ、世界8900社以上の顧客に人事サービスを提供している。

 世界のCEOを対象に調査した「IBM Global CEO Study 2012」によれば、57%のCEOがソーシャルソフトウェアによる競争力強化を最優先事項に挙げており、また、70%のCEOは持続的な経済価値の創出に最も貢献しているのは人材だと回答している。優れた人材を採用し、育てていくことは、競争優位を確立し、優れた製品やサービスを生み、売り上げの拡大につながるからだ。

 IBMの傘下に入ったKenexaのルディ・カーサンCEOは、「世界で最も強力なコンピュータは“人”。そして、優れた人材を維持するには、成功している人を採用し、社内のタレントを発掘し、高い意欲で働いてもらうことに尽きる」とし、成長の源泉が人材にあることを強調した。

Regeneron Pharmaceuticalsのグロスマン人事担当副社長

 ステージでは、Kenexaの人材管理サービスとIBMのソーシャルソフトウェアが連携し、採用からオンボーディング(組織への受け入れ)、その後のトレーニングに至るまで、効果的に優れた人材を維持していくソリューションがデモされた。e-ラーニングも単なるビデオコンテントの閲覧ではなく、それらを教材とし、分からない個所はコミュニティーや専門家に聞く「ソーシャルラーニング」の機能も提供されるという。

 ニューヨーク州に本社を置くRegeneron Pharmaceuticalsは、比較的小さな組織ながらノーベル賞受賞者を3人も抱えるなど、優れた人材で大手製薬会社と互角に競うバイオ医薬品企業。ステージに招き上げられたロス・グロスマン人事担当副社長は、「優れた雇用者であることが、われわれの成長には欠かせない」と話す。

 「採用したら長く働いてもらいたい。そのためには、社内で培ったブランド、文化、価値観を社外にもきちんと伝えていく必要がある」とグロスマン氏。

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