インターネットを利用した社外アクセスとBYODの活用実態次世代オフィスの進化論(1/2 ページ)

場所にとらわれない働き方とオフィス環境を追求した「Thin Office」を構築するクオリカ。今回はBYOD(個人所有端末の業務利用)を活用したワークスタイル変革への取り組みを紹介する。

» 2013年04月17日 08時00分 公開
[会田雄一(クオリカ),ITmedia]

 自宅や外出先、あるいは、顧客の目の前で、オフィスにある会社貸与の自分のPCをそのまま利用できたら、とても便利だろう。クオリカの「Thin Office」では、これとほぼ同等のことができるシーンを実現した。

 クオリカは、オフィスのPCを全て仮想デスクトップ(VDI)に置き換えた。これをベースに、SSL-VPN、電子証明書といったセキュリティ関連技術などを活用し、社員が社外からインターネット経由で、いつでもVDIにアクセスできるようにしている。またBYOD(私有機器の業務活用)を導入し、無駄な投資をせず、効率よく実現した(図1)。

 今回は、クオリカが社外のVDI端末をインターネット経由でVDIに接続するために採用した方式と、BYODの導入方法について説明するとともに、当社における実際の利用状況などをご紹介する。

図1 図1:インターネットを利用した社外アクセスとBYOD

ワークスタイル変革のためのBYOD

 社外からインターネット経由でVDIにアクセスすることの効果については、前回ご紹介した。在宅勤務、直行直帰、コミュニケーションの迅速化といったワークスタイルを変革し、生産性を上げたり、スピードアップを図ったりできる。また、大地震やパンデミックになっても仕事を続けることができる。

 BYODの効果も明確だ。社員が所有している機器をビジネスに活用するのだから、企業にとっては単純にITコストの削減につながる。社員もモバイル機器が増える中、個人用の機器と会社貸与の機器を二重に持ち歩いたり、充電したり、管理責任を負ったりしなくて済むので、負担が少なくなる。

 だが、社員が自発的に自分の機器を仕事に活用していくためには、それが合理的だと納得できる具体的なメリットも必要だ。仕事が従来よりも効率よく進むようになるなら皆がBYODを歓迎する。

 つまり企業は、BYODの目的がワークスタイルの変革であり、そのためのトータルコストをより少なくし、かつ、利用者にとってよりフレンドリーにするための仕組みであると考えるべきだ。

クオリカのBYOD

 クオリカは従来、業務に個人所有機器を活用することを認めてこなかった。個人所有機器を社内ネットワークにつなぐことも禁止していた。情報漏えいやウイルス感染といったセキュリティに関するリスクが最大の理由であった。

 しかし、Thin Officeの構築を機にポリシーを大きく変更し、ワークスタイル変革、事業継続の対策(BCP)、社員所有機器の有効活用による無駄なコストの削減などを目的にBYODを導入し、積極的に推進することにした。

 全社でVDIを導入したことにより、データ漏えいのリスクを減らすことができたことも、BYOD導入の大きな要因である。BYODで利用する機器をVDI端末として社内のシステムに接続し、業務に使用するのであれば、この機器からデータが漏えいすることはない。

 そこでBYODの対象とする機器は、VDI端末として使用するかどうかによって以下の2つのグループに分け、グループ毎に利用や管理の方式を区別することとした。

  • グループ1:PCやiPadなど、VDI端末として全社内システムにアクセスできる機器
  • グループ2:スマートフォンなど

 本稿ではグループ1への取り組みに絞って紹介し、グループ2への取り組みについては次回に取り上げる。

 グループ1の機器は、個人が所有する機器をインターネット経由でVDI端末として活用することを前提に導入を進めることにし、次の3点を基本方針とした。

  1. BYODで利用するVDI端末には、オフィスに設置されたVDI端末と全く同じ機能を提供する。社員はBYODで自宅や外出先からVDIにアクセスしようが、オフィスからVDIにアクセスしようが、利用業務や利用機能の面で差別されない
  2. 利用者が個人所有している機器が多様であることに配慮し、VDI端末としてBYODの対象とする機器をWindows PCに限定せず、Mac、iPadも対象とする。将来的にはAndroidタブレットなど、市場でシェアを増やした機器も対象とする
  3. セキュリティインシデントを無くすため、セキュリティに関する制約は厳重に設けるが、利用者負荷はできるだけ軽くする。また、その他は制約を設けず、BYOD利用社員の責任や負担を最小にする
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