ジェームズ氏に続いて登壇したレオン・パネッタ氏は、「ラスベガスとワシントンは米国で唯一シャットダウンしない街だ。そのはずが、ワシントンはシャットダウンした」と述べ、会場の笑いを誘った。
2014年度の連邦政府予算案をめぐるオバマ大統領と共和党の政治劇から10月1日に連邦政府の機能の一部が閉鎖されている状況を皮肉った格好だ。
そんな同氏がCIA長官や国防長官だった時代の最大の職責とは、「国民が安心・安全になれることを実現すること」だったという。
「私は貧しいイタリア系移民の子どもだ。ある時、両親になぜ祖国を捨てて米国に来たのかと尋ねた。すると、両親は『子どもたちが将来により良い人生を送れるようにするためだ』と答えた。人々が安心でより良い生活を送れるようにすること。それは国家の安全保障もITセキュリティも同じだろう」
パネッタ氏は、アルカイダを始めとするテロ組織と米国の戦いも指揮してきた立場から、安全保障においていかに情報が重要であるかを当時の心境を交えながら強調した。特にサイバーセキュリティに関しては、2009〜2010年ごろに個人や企業の情報がハッキングされるといった程度のものから国家の転覆を狙うテロに高度化したこと、2012年にかけてそれが次々と現実のものになり、米国にとってサイバー空間が最も脅威であると語った。
「2012年8月にサウジアラビアの石油会社のシステムがマルウェアによってダウンしたケースが代表的だ。サイバー空間における脅威とは、非常に破壊的なものになっている。しかし、米国市民の多くがその現実に目を向けようとしていない」
同氏はサイバーセキュリティを推進するために(1)米国市民が脅威を理解すること、(2)官民連携を強化すること、(3)情報を共有・活用すること――を挙げた。
パネッタ氏とデシーザー氏の対談ではサイバーセキュリティに必要な取り組みについて意見が交わされた。
パネッタ氏は、国民が安全な社会を手にするためには、「ウイルスが何をするのか」「『脆弱性』という言葉の意味は何か」といったことを理解することから始めなくてはならないと話す。さらに、米国の社会インフラの約9割が民間企業によって提供されているとし、連邦政府と民間企業が一致団結する必要性も説いた。
最後に同氏は、「この瞬間もサイバー空間の脅威は高まり続け、市民の生活が脅かされている。それにも関わらずワシントンはシャットダウンしたままだ。子どもたちの未来のためにすべきことを優先させなければならない」と訴えた。
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