創業210年のミツカングループがiPadを本格導入した理由(2/3 ページ)

» 2014年01月31日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

「ノートPCと何が違う?」――まずは導入目的を明確化へ

 同社がタブレット端末の導入検討を始めたのは2011年のこと。「当時は国内でもiPadなどに注目が集まり、端末の価格も比較的安くなっていた。本当に業務で使えるかどうかは分からないが、まずは使ってみようということになった」と坂本さんは振り返る。

photo 坂本さん(管理本部 情報システム部 情報企画課)

 同社はまず役員3人に対して試験導入を実施。テストユーザーはタブレットの操作に慣れていなかったが、「予想以上に3人とも気持ちよく使ってもらえた」という。試験運用の結果(1)ノートPCと違って起動が速く、立ち上げて数秒でメールなどを利用できる点、(2)バッテリーが長時間持ち、長距離移動中も充電なしで1日中使える点、(3)タッチ操作で承認業務をスピーディーに行える点――などのメリットを確認できた。

 こうして利用メリットを見定めた同社は、2013年には主に経営職を中心とする約100人に向けてタブレットを本格導入した。端末選定に当たっては、バッテリーの持ちやセキュリティ機能などを総合的に考慮してiPadに決めたという。「導入目的を事前に明確にし、使い方と合わせて利用者に伝えることで、スムーズに利用を始められた」と桝田課長は話す。

稟議承認フローが高速化 現場の社員との“時間のずれ”も解消

 iPadの運用方式としては、ソフトバンクテレコムの閉域ネットワークサービス経由で社内システムにアクセスする方法を採った。また、iPadからNotes/Dominoのメールやカレンダーを利用する仕組みには、Notes/Domino 8.5.3が標準搭載している「Lotus Notes Traveler」機能を主に活用。iPad標準のメール/カレンダーアプリに対してNotes/Dominoのデータをリアルタイムで同期している。

 同社のiPad活用法でユニークなのは、Notes/Dominoの業務データベースをiPad上で使うためのモバイルアプリを自社開発している点だ。Notesに標準搭載されているWeb開発技術「XPages」を使い、既存の業務システムをモバイルアプリ化。それをソフトバンクテレコムのMDM(モバイル端末管理)ソフトを使って全端末に配布している。

 この方法で作成したアプリは「iPad向けに画面が最適化されているとはいえ、中身は使い慣れたNotes/Dominoなので、新たに使い方を細かくレクチャーしなくても使ってもらえるほか、既存の情報資産を新しいデバイスにそのまま適用できるメリットがある」と坂本さんは話す。

photo iPad利用イメージ

 導入の効果はすでに表れているという。同社の社内調査によれば、従来は経営職がワークフローを回覧してから承認を終えるまでに3日以上かかるケースが全体の20.2%あったが、iPad導入後は6.8%まで減ったとのことだ。

 さらに、ユーザーの利用ログを見ると、早朝から夜までさまざまな時間帯でiPadが使われていることが分かったという。「現場の社員は遅くまで仕事をすることもあるが、経営職の中には早めに退社して朝型の生活を送っている人もいる。従来はこうした業務時間のすれ違いも承認フローの遅れを生む一因になっていたが、iPadでその“差”を解消できた」(坂本さん)

 タブレット利用時のセキュリティ対策としては、端末内に社内システムのデータを残さない仕組みを採用したほか、端末紛失時のリモートロック/リモートワイプ機能も用意している。「紛失する恐れがあることを前提にセキュリティ対策を施している」と桝田課長は話す。

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