消費税8%と振込手数料の意外な事情萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/3 ページ)

» 2014年03月07日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

カラクリ

 まだ消費税が存在していない頃(1989年4月以前)は、確かにその通りだと考えて差し支えなかった。しかし、1989年4月の消費税3%導入時にその意味合いは変化している。実はそのことに気が付いていない銀行は多いようだ。その頃に新人教育を受けた行員たちにお聞きすると、「増分は印紙代と習った」という返答しかなかった。たぶん、消費税導入前の教育がそのままに継続されていたのだろう。

 だが、一部の賢い方々はこの話に矛盾があると気付かれるのではないか。実は消費税が3%だろうが、5%だろうが、8%になっても、2015年に10%になっても、国税庁の管轄となる印紙税に消費税が加算されるということは有り得ない。

 銀行員たちが受けた「新人教育」の理屈とするなら、あくまで増分は純粋な手数料にあたる。前項の例なら、他行あての3万円振込の場合、「本体400円+印紙代200円+本体の消費税5%の20円」となるので、630円ではなく620円になる。理屈のうえでは10円を余計に取っていることになる。

 ここからは元銀行員の立場として述べてみたい。釈明になるかもしれないが、金融機関にとって振込事務はこの金額でも赤字になっていた。筆者にも経験はあるが、銀行のATMに並んでいると、行員(ほとんどは銀行OBだが)が「お振り込みですか? それならお隣のコンビニで直ぐに処理してくれますよ」と案内する。並んでいる方からすると「そんなこと分かっていますよ。他行の状況を観察しにわざわざ振込用紙を持って並んでいるのに」と心で思いながら、「コンビニはよく分からないので……」というしかなかった。

 金融機関側からすると表立って手数料をアップすることは、なかなか発表しづらい。たぶん頭のいい方がその時点で、「プラス200円」を印紙代ではなく、全てを包含して本体としての「手数料」に、いつの間にか変化させてしまったのだろう。その理屈で、今では正々堂々と本体の全体額600円に消費税30円が加算されることになった。印紙代は全く表面には出てこない“黒子”になったのである。その「残骸」が、結果として「3万円基準」となったのだと筆者は考えている。

 4月から消費税が8%になる。だから、金融機関の対応は現在の5%分を8%にすればいい。印紙代は黒子にはなったが、金融機関にとって振込事務は相当の負担であることには変わりがない。「3万円基準はそのままにしよう」ということである。ここまでことならわざわざ本稿で記述するほどもないが、実はさらなる“変化球”が仕組まれている。

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