モバイルをめぐる活用と管理の最前線・前編デバイスからコンテンツへ(2/2 ページ)

» 2014年05月26日 09時30分 公開
[古舘與章,ITmedia]
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新たなモバイル管理ソリューション

 米国で既に市民権を得て、日本でも本格展開が始められているソリューションが、「MCM(Mobile Content Management)」である。

 MCMは、MDM(Mobile Device Management)やMAM(Mobile Application Management)の流れをくむEMM(Enterprise Mobility Management)製品の一部と捉えられることが多い。MobileIronやGood、Citrix、そして最近VMwareに買収されたAirWatchといったところが、MDM/MAMの組み合わせによってMCMを提供している。これらに加え、MCMを単独で提供するWatchDox、Accellion、Acronis Accessなどが米国では主要なソリューションである。

 MCMの定義についてMDMやMAMと比べてみると、ユーザーにはまだなじみが薄い部分があるかもしれない。コンテンツを企業のポリシーに準じて管理できる製品であるため、「管理」や「セキュリティ」のイメージが先行しがちだが、一方でMCMはユーザーインタフェースや使いやすさも重視した多機能のソリューションである。これらの機能を企業が自社のポリシーに応じてオン/オフ制御できる点が特徴だ。また、Active Directoryとの統合や連携により、ユーザープロビジョニングやユーザー管理におけるIT管理者の負荷を大幅に低減できるのも非常に有益なポイントになる。

 MCMの機能は、提供するベンダーによって様々だ。ファイルへのアクセス・共有・同期・転送・配信と、ベースとなる機能範囲も異なる。セキュリティ機能として情報漏えい対策が徹底されている点は、どのソリューションにも共通する。メールへのファイル添付や印刷機能の制御、ファイルのテキストコピーやデバイス上のほかのアプリへのファイル受け渡し(Open In)の制御、オフラインのファイル閲覧の制御が、主な情報漏えい対策機能である。

 ログ機能が充実しているため、万一のセキュリティインシデントが発生した場合にも、すぐに発生元を特定し、報告することができる。デバイスが紛失や盗難に遭った際にも、アプリ内のデータと設定をワイプ(消去)できるため、IT管理者はあらゆる情報漏えいのリスクを低減できる。もちろん、オフラインアクセス用のファイルは、閲覧などの操作時、デバイスへの保存時ともに暗号化される。

 ファイル操作に関しても、閲覧だけでなく編集や同期、移動などの機能が提供される。モバイルユーザーは、デバイスを最大限活用してファイルを利用することができる。もちろん、これらの機能は制御することもできる。

 IT部門の要件としては、その他に認証や既存ファイルサーバの利用もあるが、認証に関してはActive DirectoryやLDAP認証に加え、証明書認証が利用でき、米国で多く利用されているSmart Cardに対応したものもある。既存のファイルサーバ利用では特に、Active Directoryで管理されるいつもの権限でユーザーに提供したいという要望が多い。これは、ユーザーにとって生産性や即時性で大きな効果を得られるだけでなく、IT部門の管理負荷の大幅な低減につながる。


 MCMは、「セキュリティの確保」「ユーザーの生産性向上」に加え、「IT部門の負荷低減」を提供できる、企業にとって理想的なソリューションと言える。今後はMCMが日本国内でも本格的に利用されていくことが予想されるが、それによって「今はこういったファイルソリューションしかないため、仕方なく使う」から、「このMCMを使いたいから使う」時代になり、モバイルコンテンツ管理が真に企業の生産性に貢献できるようになると期待される。

 後編ではこうしたソリューションの選択について、生産性やセキュリティ、運用管理の観点から言及する。

執筆者紹介:古舘與章

アクロニス・ジャパン株式会社 リージョナル プロダクト マネジャー

2012年9月アクロニス入社。コンシューマおよび法人向けバックアップ製品、法人向けモバイルおよびMac関連製品のプロダクト管理、新事業および新製品の立ち上げを担当している。


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